Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

おめでとう! 『こんなレベルの低い将棋見たことがない!』が商業電子書籍化決定

【前回の記事】応援しよう! 書籍化を目指す『こんなレベルの低い将棋見たことがない!』

 商業書籍化を目指していた安藤たかゆきさんのWeb将棋漫画『こんなレベルの低い将棋見たことがない!』ですが、ついに結果が出ました。

 電子書籍でリリースが決定!
 全1巻(全10話+書き下ろし1話)というコンパクトなボリュームになるようで、かなり買いやすいのではないかと思います。私は最近、漫画はほとんど電子書籍で買っていますし大歓迎です。

 かなり多くの応援の声があったのだと思います。私も応援していたので、非常に喜ばしい! 将棋漫画は数あれど、初心者の将棋をここまで笑えるレベルにしている漫画は、たぶん唯一無二です。来年のリリースを心待ちにしましょう。もうちょっとどんな作風なのか知りたいという方は既刊をどうぞ。

こころを病んで精神科病院に入院していました。 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

こころを病んで精神科病院に入院していました。 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

 
どどどもる私。?吃音って知ってる??(1) (COMIC維新りあら)

どどどもる私。~吃音って知ってる?~(1) (COMIC維新りあら)

 

 

同人グッズの売り子をするA級棋士ってマジ? 糸谷哲郎八段がコミケ参戦

【前回の記事】香川愛生女流三段の冬コミ本は初心者向けガイド&女流棋士10周年記念ビジュアルブック!

 先日記事にしたとおり、もうすぐ開催されるコミックマーケットで香川愛生女流三段が豪華なグッズを頒布されます。
 そしてその売り子に、まさかの人物が参戦することに!

 コミケで売り子をする現役A級棋士で元タイトルホルダー(竜王)。何やってんすかマジで。
 糸谷八段は大晦日、永瀬拓矢七段との壮大な九番勝負が予定されています。前日は十分休んでいてよさそうなものですが……あっさり香川さんの頼みを引き受けたというから、将棋普及へのその情熱には本当に頭が下がります。

live.nicovideo.jp

 というわけで、コミケ会場で糸谷八段に会えるチャンスですよ!

僕らの哲学的対話 棋士と哲学者

僕らの哲学的対話 棋士と哲学者

 

羽生善治さんの肩書、明日発表。段位は本来ありえない?

 竜王位を失い27年ぶりに無冠となった羽生善治さんについて、目下関係者やファンの最大の関心事は肩書です。
 ただの「九段」か「前竜王」か、はたまた何らかの永世称号か……。直後のスポーツ報知では、前竜王になる見込みだと報じられていました。

www.hochi.co.jp

 先日の記事でも述べたのですが、私は個人的には九段になるのだろうと思っていました。ご本人は肩書にはさほどこだわりがなさそうですし、そもそも前竜王を名乗った棋士は、1994年に失冠したときの佐藤康光九段が最後。およそ25年も例がなかったのです。
 竜王戦の規定では、失冠しても1年間は前竜王を名乗れます。しかし本人の意向によってはその権利を行使せず辞退できる……多くのファンがそう考えていたわけですが、将棋界の事情に詳しい田中誠さん(指導棋士)から、貴重なコメントをいただけました。

 前竜王を名乗るのは本来であれば辞退できるものではなく、契約上の義務であるはず、というのです。確かに「前竜王を名乗ることは義務ではない」と明記でもされていないかぎり、そういうことになるのかな……と思います。スポンサーとしては当然、段位よりは前竜王のほうを名乗ってもらいたいでしょうし。このあたり明文化されているのか、気になるところです。

www.hochi.co.jp

 ともあれ今日のスポーツ報知で、肩書については明日に正式発表されるという羽生さんのコメントが紹介されています。注目しましょう。

羽生善治全局集 ~デビューから竜王獲得まで~

羽生善治全局集 ~デビューから竜王獲得まで~

 

女性の初心者は『新ハート将棋』からはじめてみよう!

 将棋に興味を持つ女性を増やそう……そんな取り組みはそれこそ女流棋士制度が生まれた頃からあるわけですが、近年はその取り組みがよりバラエティに富んでいます。
 そのひとつが『ハート将棋』です。

www.naturliv.jp

 ご覧のとおり、駒をハート型にした木製将棋セットです。以前から発売されていたのですが、最近になって『新ハート将棋』としてリニューアルされました。監修はLPSA(日本女子プロ将棋協会)です。そしてAmazonでも取り扱いされています。

 将棋はまだまだオジサン臭いというイメージがあるのですが、これなら女性でも楽しめそうですね。女子会のユニークなアイテムになるかも?

『りゅうおうのおしごと!』イラストレーター・しらびさんの新作同人誌『りゅうおうの軌跡!』に注目!

 新竜王誕生の興奮冷めやらぬ将棋界ですが、竜王といえば相変わらず絶好調の将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』。来年2月には最新第10巻が発売されます。

りゅうおうのおしごと! 10 小冊子付き限定版 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 10 小冊子付き限定版 (GA文庫)

 

 この作品の魅力のひとつが、可愛くカッコいいイラストの数々。そのすべてを手がけるイラストレーター・しらびさんが今度のコミックマーケットで新作同人誌を発表されます。

「りゅうおうのおしごと!」のカラー本、モノクロ本、らくがき帳の3冊セットになります。

カラー本は54p、今までに描いたもの+αを収録しています。
ゲストにチョモランさん、たけぽんさん、町村こもりさん、wagiさん、かにビームさん、サテーさん、lackさん、ピスケさんの8人にもイラストを寄稿していただいています。

モノクロ本116p、GA文庫「りゅうおうのおしごと!」1~9巻の中に描いた挿絵のラフ+αラフを収録したお仕事本です。

らくがき帳は36p 中身は無地のものになります。

 とのこと。コミケ会場に足を運べない人も、メロンブックスで通販予約が始まっています。原作ファンはマストバイでしょう!

いまだ続いている、羽生善治九段の伝説

 3勝3敗のフルセットにもつれ込んでいた第31期竜王戦第7局は、挑戦者の広瀬章人八段が羽生善治竜王を破り、タイトル奪取に成功しました。

 広瀬章人新竜王の誕生です。将棋界には「竜王戦1組優勝者は竜王奪取できない」という有名なジンクスがあったのですが、それをも破りました。
 2018年度に入ってからの広瀬竜王は、まさに人が変わったような強さを見せていました。先日も棋王戦への挑戦を決めたばかりで、今もっとも強い棋士と言っても過言ではないでしょう。

 一方「勝てばタイトル通算100期、負ければ27年ぶりの無冠」と各マスメディアもさかんに報じていた羽生善治九段。ああ、これからしばらくはそう書かねばならないのです。肩書はどうするのかという疑問も少なからずあるようですが、普通に九段を名乗るでしょう。

 平成の終わりとともに、将棋界の歴史も大きく動きました。
 しかし羽生九段の伝説はまだ続いています。
 大山康晴十五世名人は50代になってもタイトルをいくつも獲得し、60代でタイトル挑戦を果たしました。そして69歳で亡くなるまで生涯A級を維持しました。
 羽生九段の新たな目標――タイトルホルダーへの返り咲きはもちろんですが、これらの大記録があります。
 ご本人が口にすることはないかもしれません。しかしいつか大名人の記録を上回ることを、多くの将棋ファンが夢見ています。

決断力 (角川新書)

決断力 (角川新書)

 

香川愛生女流三段の冬コミ本は初心者向けガイド&女流棋士10周年記念ビジュアルブック!

【前回の記事】香川愛生女流三段、コミックマーケットに初出展! しかもいきなり壁サークル

 今月末のコミックマーケットへの参加を表明していた香川愛生女流三段ですが、ついにその頒布物の内容が発表されました。

 初心者向けのガイドブック『コレカラ将棋ガイド!』と女流棋士プロ入り10周年記念ビジュアルブック『ENTRÉE』。
 私は先日、将棋マンガナイトというイベントに足を運びました。これに香川さんはゲスト出演しており、これら頒布物の先行発表をされていたので概要は知っていたのですが、それにしても驚きです。

『コレカラ将棋ガイド!』の表紙イラストは『りゅうおうのおしごと!』でおなじみのしらびさん。なんとも美しい。
『ENTRÉE』は写真集仕立てのビジュアルブック。前半は香川さんの写真、後半はイラストレーター・漫画家による香川さんイラストという構成です。寄稿者については、これから毎日紹介されるとのこと。

 将棋には今まであまり関心がなかったアニメ・漫画ファンにも、間違いなく突き刺さるでしょう。
 そしてコミケにはまったく関心がなかった将棋ファンでも、ぜひ欲しいという人が多いはずです。その人たちのために「コミケはじめて参加ガイド」的な記事を近日中に書こうと思います。

職業、女流棋士 (マイナビ新書)

職業、女流棋士 (マイナビ新書)

 

『将棋めし』実は打ち切りの危機……ファンの力を今こそ集めよう

 漫画『将棋めし』の作者、松本渚さんから重大なツイートがされました。

 連載継続の危機。こういった話は毎日のようにTwitterで見るのですが、『将棋めし』もその困難に直面していたのです。
 実はこの件については、先日足を運んだ「将棋マンガナイト」で登壇者のひとりから触れられていたので知っていました。まさかそんな状態だったとは思いもせず驚いたのですが、作者ご自身から発信されたので、当ブログでもこうして記事にしようと思った次第です。

『将棋めし』は私が今いちばん応援している将棋漫画です。近年流行しているグルメ漫画と将棋を組み合わせた、まさに唯一無二の作品。何より作者さんが本当に将棋好きということがわかる作品です。もし連載終了となれば、こうしたテーマの作品がこのクオリティで出てくることは二度とないでしょう。去年にはドラマ化もされ、内田理央さん、上遠野太洸さん、稲葉友さんら人気若手俳優が主演したことでファン層も広がりました。
 ちょっと気になってた作品だけどピンチと知ってればもっと早く買ったのに――連載終了が決まって初めてこうした声が上がることもよくあるのですが、『将棋めし』もまさに今が最後のチャンスなのです!

 現在の漫画界はあまりにも競争が激しいですが、ファンの力を集めればきっと事態は改善の方向に向かうはず。作者さんの声が、将棋ファンだけでなく一般の漫画ファンにも伝わるよう願っています。なお、電子書籍ではなく紙の本が売れるほうが、出版社にとっては好材料のようです。

将棋めし 4 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

将棋めし 4 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 

いつかは解決を目指すべき、テレビ棋戦のネタバレ

 先日、藤井聡太七段が最速・最年少・最高勝率で通算100勝を達成したことは大きな話題となりました。

 この記録を達成したのは第27期銀河戦です。藤井七段、まことにおめでとうございます。
 しかしここでひとつの避けがたい問題が発生していました。通常、テレビ棋戦は放映日まで勝敗は明かされないのですが、キリのいい勝数達成や規定を満たしての昇段を達成した場合はこのかぎりではありません。このとき将棋連盟からは「規定の成績を挙げたため」とぼかして公式発表されるのですが……まあちょっと詳しい将棋ファンであれば察しがついてしまうわけです。※今回、棋戦名まで発表された藤井七段は例外中の例外です。
 たとえば稲葉陽八段は2013年、銀河戦で優勝したときは六段でしたが、「六段昇段後全棋士参加棋戦優勝」の規定を満たして七段に昇段しました。

www.shogi.or.jp

 場合によっては棋戦優勝についても見当がついてしまう。これがいわゆる「テレビ棋戦のネタバレ」で、対局日と放映日にタイムラグがあるがゆえの、まさに構造的に避けがたい問題なのです。

 が、「ネタバレされてもまあ仕方がないよね」で本当にすませていいものでしょうか?
 やはり観戦者の立場からすると、あらかじめ勝敗がわかっている対局というのは興が削がれていることは否めません。
 解決策だけを言うなら「生中継」です。もちろんテレビ棋戦でこれを毎度やるのは想像を絶する大変さがあるでしょう。そこまで頻繁にあるわけではないケースのために、今の仕組みを変えるのはリスクが大きすぎるかもしれません。

 しかし現状の仕組みがベストでないことは明らかです。当事者であるプロと、テレビ棋戦主催社と、そしてファンが知恵を出し合って、いつかは解決を目指していければいいと思います。

NHK将棋講座 2018年 06 月号 [雑誌]

NHK将棋講座 2018年 06 月号 [雑誌]

 

女流棋士待遇改善の第一歩は? 新タイトル戦設立と竹俣紅女流初段の退会に思うこと

 女流棋戦の7つめのタイトル戦「ヒューリック杯清麗戦」が発表されたことは、将棋界にとって今年もっとも喜ばしいニュースのひとつとなりました。

www.shogi.or.jp

 優勝賞金は女流棋戦最高の700万円! この棋戦を作り上げるために佐藤康光会長以下、将棋連盟の理事たちがどれほど粉骨砕身したことでしょうか。そしてヒューリック株式会社の将棋界に対する惜しまぬ支援に対し、将棋ファンのひとりとしては感動を禁じ得ません。

 一方で寂しいニュースもありました。竹俣紅女流初段が今年度末をもって引退、さらには将棋連盟を退会して将棋界から離れるというニュースです。

lineblog.me

 竹俣さんの将棋界に留まらない才覚は、将棋ファンなら誰もが認めるところです。女流棋士ではなくなっても、きっと問題なくやっていけるだろうと思います。今年度末の引退ということは1月に始まるヒューリック杯清麗戦の予選には出場するかと思いますが、最後の活躍を期待したいですね。※2018/12/17追記:清麗戦には不出場と判明しました。

 竹俣さんの引退・退会をきっかけに、女流棋士の待遇に対して活発な議論が交わされています。女流棋士は男性棋士に比べて不遇であるというのは長年言われていることで、それこそこのテーマだけで1冊書けてしまうほどです。
 その不遇の一因と間違いなく言えるのは、女流棋士の全体的な対局数が少ないことです。竹俣さんは2012年のデビューですが、通算成績は63戦して28勝35敗(記事執筆時点)。1年間で平均10局前後しか戦えなかったことになります。

 なぜ対局数が少ないのか。「勝てないからだ。弱いからだ」と言ってしまうのは簡単です。実際、女流棋士は男性棋士と比較してそういうことを言われ続けていました。しかしこれはフェアではないと言えるでしょう。
 男性棋士には順位戦があります(フリークラス除く)。1年間通して戦うリーグ戦である順位戦の存在はとても大きく、春先を除けば月1の対局が保証されています。女流棋士にはそういう環境がないわけです。戦う機会が少なければ勝つ機会も増えようがありません。そして強くなる機会も。

 女流名人戦は現在予選がトーナメント制になっていますが、A級からC級までのリーグ制だったことがありました。

 この女流順位戦的なシステムを復活させてほしいと、私は個人的に思っています。
 対局料の全体的なアップ、そして実力向上に資する真剣勝負の場の整備。男性並みに対局数を増加させることこそ、女流棋士待遇改善の第一歩であると考える次第です。

職業、女流棋士 (マイナビ新書)

職業、女流棋士 (マイナビ新書)