女流棋士待遇改善の第一歩は? 新タイトル戦設立と竹俣紅女流初段の退会に思うこと
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女流棋戦の7つめのタイトル戦「ヒューリック杯清麗戦」が発表されたことは、将棋界にとって今年もっとも喜ばしいニュースのひとつとなりました。
優勝賞金は女流棋戦最高の700万円! この棋戦を作り上げるために佐藤康光会長以下、将棋連盟の理事たちがどれほど粉骨砕身したことでしょうか。そしてヒューリック株式会社の将棋界に対する惜しまぬ支援に対し、将棋ファンのひとりとしては感動を禁じ得ません。
一方で寂しいニュースもありました。竹俣紅女流初段が今年度末をもって引退、さらには将棋連盟を退会して将棋界から離れるというニュースです。
竹俣さんの将棋界に留まらない才覚は、将棋ファンなら誰もが認めるところです。女流棋士ではなくなっても、きっと問題なくやっていけるだろうと思います。今年度末の引退ということは1月に始まるヒューリック杯清麗戦の予選には出場するかと思いますが、最後の活躍を期待したいですね。※2018/12/17追記:清麗戦には不出場と判明しました。
竹俣さんの引退・退会をきっかけに、女流棋士の待遇に対して活発な議論が交わされています。女流棋士は男性棋士に比べて不遇であるというのは長年言われていることで、それこそこのテーマだけで1冊書けてしまうほどです。
その不遇の一因と間違いなく言えるのは、女流棋士の全体的な対局数が少ないことです。竹俣さんは2012年のデビューですが、通算成績は63戦して28勝35敗(記事執筆時点)。1年間で平均10局前後しか戦えなかったことになります。
なぜ対局数が少ないのか。「勝てないからだ。弱いからだ」と言ってしまうのは簡単です。実際、女流棋士は男性棋士と比較してそういうことを言われ続けていました。しかしこれはフェアではないと言えるでしょう。
男性棋士には順位戦があります(フリークラス除く)。1年間通して戦うリーグ戦である順位戦の存在はとても大きく、春先を除けば月1の対局が保証されています。女流棋士にはそういう環境がないわけです。戦う機会が少なければ勝つ機会も増えようがありません。そして強くなる機会も。
女流名人戦は現在予選がトーナメント制になっていますが、A級からC級までのリーグ制だったことがありました。
女流棋界(女流プロ名人位戦)にC級まであった頃 pic.twitter.com/7FxYV3mip9
— math26 (@math26) 2018年12月12日
この女流順位戦的なシステムを復活させてほしいと、私は個人的に思っています。
対局料の全体的なアップ、そして実力向上に資する真剣勝負の場の整備。男性並みに対局数を増加させることこそ、女流棋士待遇改善の第一歩であると考える次第です。