将棋漫画『或るアホウの一生』が連載終了へ
トウテムポールさん作、橋本崇載八段が棋譜監修の『或るアホウの一生』。プロを目指す奨励会員男子(のちにプロ入り)を独自の作風で描いた将棋漫画ですが、残念ながら連載終了が決まったようです。公式の他、作者さんのTwitterでも報告されています。
マンガワン 『或るアホウの一生』本編更新!紫紅編クライマックス、先読み27話では遂に瞬くんとの出会いがーーー次回本編更新28話で、最終回となります…みなさま、どうか紫紅の最期を見届けてください! pic.twitter.com/mZpcgIsqXO
— 或るアホウのお知らせ (@poleoshirase) 2018年10月3日
また打ち切りという言葉が物凄く悪意的に取られてしまっておりますが、連載が終了することに関して、こちらも編集部と私が話し合った結果の結論ですので、どうか悪意的に取らず…みんな悲しいですが誰かが意地悪をしている訳では無く制作サイドも同じく苦渋の決断だとご理解下さいますようお願いします
— トウテムポール (@teddy_pole_boy) 2018年10月9日
第1巻が2015年10月、第2巻が2016年10月、第3巻が2017年11月刊行と、スローペースながら根強い人気を持つ作品という印象でしたが、さまざまな事情があって連載終了となったようです。
私は確か第1巻が発売されてすぐKindle版を購入しましたが、主人公がプロへの決意ということで化粧をした(!)シーンがものすごく印象的でした。本当にユニークな作品なので、未読の方はぜひいかがでしょうか。
社会支援のために。ビッグイシューに羽生善治竜王が登場
ビッグイシューという雑誌をご存じでしょうか。
ホームレスの人の社会的自立を応援する、イギリス発祥の雑誌です。日本では2003年9月より刊行されており、今がちょうど15周年になります。
許可証を持つホームレスの人が繁華街などで街頭販売しているのを、見かけたことのある人もいるかと思います。定価350円のうち180円が販売者の収入になるということなので、50冊売ってちょうど1日バイトの収入と同額というところでしょうか。
社会支援の手段として少しずつ認知度を上げているビッグイシューですが、最新号である創刊15周年記念号に、羽生善治竜王が表紙とインタビュー記事で登場しています。
今日、仕事で新宿方面に出かけたのですが、その帰り道で販売者の方を見かけました。そういえば羽生さんが出てるんだっけ――と思い出したので、こうして1冊購入したわけです。
多忙を極める羽生さんですが、将棋ファン向けの普及活動だけでなくこうした社会支援も積極的に行っています。みなさんもぜひ、街頭で見かけた際は購入されてはいかがでしょうか。通信販売もあります。
名作将棋小説『盤上のアルファ』が来年NHKBSプレミアムでドラマ化
『盤上のアルファ』という将棋小説をご存じでしょうか。
第5回小説現代長編新人賞を選考会の満場一致で受賞し、2011年に刊行されました。のちに将棋ペンクラブ大賞でも文芸部門の大賞を受賞しています。
作者の塩田武士さんはもともと神戸新聞社の将棋担当記者で、その経験が本作の評判に繋がりました。私も持っていますが、とにかくキャラクターと会話が面白い。未読の方はぜひとも読んでいただきたいです。
その『盤上のアルファ』が、このたびNHKBSプレミアムでドラマ化されることになりました。
【 #盤上のアルファ ~約束の将棋~】「ふたりっ子」以来、NHKが将棋界を舞台にドラマを制作します。「あさが来た」で“おもろい父子”を演じた玉木宏と近藤正臣のコンビがプレミアムドラマに復活!!
— NHKドラマ (@nhk_dramas) 2018年10月10日
2019年2月3日(日)スタート BSプレミアム 毎週日曜よる10時https://t.co/EVmyQLsWXs#NHKドラマ
これもやはり、最近の将棋ブームを受けての企画かと思われます。しかし刊行以来多くの人の好評を受けている作品ですので、そのクオリティはすでに保証されているといっていいでしょう。
放送は来年2月予定。今からとても楽しみです。
『俺の棒銀と女王の穴熊』第2巻が無料に! そしてAmazonで第1位を獲得
私が電子書籍で個人出版している将棋ライトノベル『俺の棒銀と女王の穴熊』ですが、第2巻を無料化しました。合わせて第4巻を99円に改訂しました。
今年2月に第1巻を無料化した際には、Kindle版が1週間以上にわたり無料ライトノベルの第1位を獲得し、多くの人に読んでいただけました。
今回もぜひ1位を獲りたい! と思っていたのですが、先ほどチェックしてみたら見事に1位になっていました。ありがとうございます。
ニコニコの公式チャンネルから各ストア、各巻へのページに飛べますので、ぜひこの機会によろしくお願いいたします。
藤井聡太七段vs出口若武三段、注目の新人王戦決勝三番勝負!
明日10日、藤井聡太七段と出口若武三段による新人王戦決勝戦、第1局が行われます。ニコ生での生中継もあります。
【第49期新人王戦 決勝三番勝負】
— ニコ生公式_将棋 (@nico2shogi) 2018年10月9日
10/10(水)10時より、藤井聡太七段vs.出口若武三段の第1局を生放送します。
藤井七段は最後の新人王戦の優勝を、出口三段は第44期以来の奨励会三段優勝をかけた、注目の三番勝負です。
解説:井出隼平四段、聞き手:安食総子女流初段。
▼視聴https://t.co/nAsfAhTHzE pic.twitter.com/GFyawNnyBk
藤井七段は新人王戦の組み合わせ発表時はまだ四段でしたが、その後スピード昇段したことにより他の若手棋戦への出場資格を次々と失いました。新人王戦も今期がラストチャンスになります。
【参考記事】藤井聡太六段、強すぎて若手棋戦に出られなくなる - Arai Koh's Shogi Life
新人王戦は現在の名だたるトップ棋士たちが優勝してきた、若手の登竜門。藤井七段も確実に優勝をものにして、その棋歴に箔をつけることが求められていると言えます。
一方の出口三段も、ライバルの三段だけでなくプロ棋士相手に勝ちを収めてきたわけですから、間違いなく強いです。現在の公式戦成績は13勝8敗と堂々の勝ち越し。今期の三段リーグは10位となかなかの上位にいます。
奨励会三段による新人王戦優勝は、2013年の第44期、都成竜馬現五段が唯一の例です。都成さんのこの快挙は、将棋連盟を動かしました。奨励会三段が新人王戦で優勝した場合、次点がひとつ与えられるという規定が作られたのです。
つまりプロデビューが少なからず近づくわけです。出口三段はプロになるために、何としてもこのチャンスをものにしなければなりません。
どちらが勝っても、大きな話題になることは間違いありません。注目していきましょう。
マジですか? 『仕事は将棋に置きかえればうまくいく』
Amazonの新刊をチェックしていると、気になる本を見つけました。
『仕事は将棋に置きかえればうまくいく』。著者の加藤剛司さんは、構成作家・ライターとのことです。
最近の将棋ブームは初心者向けの入門書をはじめ、棋界や棋士に関する多くの読み物を生み出しています。この手の「何らかの形で将棋を絡める」タイプの本も以前からありますが……。
■主力2人+斬り込み役2人のカルテットでうまくいく
「攻めは飛角銀桂で」
■企画をスタートする時点で、リスクヘッジは済ませておく
「玉」を囲ったら、必ず「端歩」を突いて逃げ道を作っておく
一部を引用するとこのような感じです。「大ブームの将棋の思考法をビジネス書に置きかえた、新発想の自己啓発本」という触れ込みですが、興味のある方はまずは目次を確認してみてはいかがでしょうか。
「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査の件、難航中です
【前回の記事】「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査の件、ほんの少し進展がありました
いやあ、全然見つかりません。
図書館に行ったり、ヤフオクやらAmazonのマーケットプレイスやらで羽生さん関連の書籍をいろいろ取り寄せて読み漁っているのですが、まったく見つからないのです。
前回の記事で「羽生善治さんの本」とはっきり書かれていたことがわかっています。しかしこれはよく読むと厄介で、「羽生さんが著者になっている本」と必ずしもイコールではないんですよね。
たとえば昨年から藤井聡太さんの関連書籍がたくさん出版されていますが、藤井さん自身が書いた本はひとつもありません。他の棋士や将棋ライターが書いた本ばかりです。しかし本屋に並んでいれば世間の人たちは「あ、藤井さんの本だ」と認識するでしょう。それと同じ理屈です。
やはり羽生さん本人が発言したとは考えづらく、何らかの評論本に書かれていると睨んではいるのですが……。しかし羽生さんのファンはとても多いのに「この本にあるよ!」という声が一向に上がってこないのも不思議です。
ですので「他の棋士の本と混同した」という線も考えてはいます。
とりあえず「ネットロアをめぐる冒険」さんの調査リスト(記事執筆時点)にはなかった、自分が調べたものを以下に列挙してみます。
名人、羽生善治。時代を切り拓く、スーパーヒーローの記録。将棋世界 8月号臨時増刊号 1994
長嶋方程式!―“燃えるトークスペシャル” 1995
七冠王、羽生善治。羽生善治のミラクルワールド、その秘密のすべてがここにある。将棋世界 4月臨時増刊号 1996
サンデー毎日臨時増刊 七冠天才棋公子 羽生善治の世界 1996
羽生 21世紀の将棋 1997
一流になる人 二流でおわる人 1999
ここまで来て諦めるのもシャクなので、まだまだ調査は継続していきます。
【続きの記事】出典不明の羽生善治語録、書籍から削除される方向へ?
元奨励会三段の甲斐日向さん、将棋教室を開設
前期の第63回三段リーグをもって、年齢制限により奨励会を退会した甲斐日向さん。NHK杯テレビ将棋トーナメントの記録係を数多く務め、奨励会員の中では特に将棋ファンに知られている方でした。
次点を取ったことがあり、奨励会員枠で参加した公式戦ではプロ相手に幾度も勝つほどの棋力の持ち主でしたが、それでもプロになれないのですから、奨励会という世界の理不尽とも思える厳しさがあらためてわかります……。
三段まで上り詰めながら退会を余儀なくされた奨励会員たちの進路は、将棋ファンの多くが気にしていることですが、変わらず将棋に携わる人も少なくありません。甲斐さんもその道を選んだようです。
駒の動かし方から学べる「甲斐日向将棋教室」。東京の御徒町将棋センターで毎週土曜日に行われるとのこと。また、初心者からプロ志望まで個人レッスンを請け負っているようです。奨励会員時代から将棋講師をしている人は多く、甲斐さんもそのひとり。すでに経験十分というわけですね。
初心者向けの教室はじめます。よろしくお願いします。https://t.co/z86n6j12FA
— 甲斐日向 (@LyrR8p0DaKmhUqB) 2018年10月4日
甲斐日向将棋教室
Twitterアカウントも先日開設されましたが、続々声援が届いています。私も影ながら応援させてもらおうと思います。
「ヒロシです……」プロデビューした山本博志四段は振り飛車党期待の星
プロ棋士は原則、半年に2人誕生するわけですが、10月1日付けでプロデビューしたのが本田奎四段と山本博志四段です。
積極的にSNSで情報発信するプロ棋士が多いですが、山本四段もさっそくTwitterアカウントを開設しており、将棋ファンの注目を集めています。
ヒロシです、、、
— 山本 博志 (@yamahiro3ken) 2018年9月10日
一緒に昇段した本田くんが白いせいで、僕の黒さがより目立ってるとです、、、
青の明るいスーツが浮いてるせいで、お笑いコンビと間違えられてるとです、、、
ヒロシです、、、ヒロシです、、、ヒロシです、、、😇
昔懐かしのネタ(言うほど昔ではないですが)
実は山本四段、昨年に師匠の小倉久史七段との共著で戦術書を出しています。共著とはいえ奨励会三段でありながら出版デビューした、きわめて稀な人材のひとりというわけです。
この『三間飛車新時代』は、プロ間でも使い手の少ないノーマル三間飛車の最新研究を扱ったものです。Amazonでの評価もかなり高めですね。
山本四段は三間飛車一筋を公言しており、つまり振り飛車党期待の星といえるのです。
参考リンク:将棋・山本博志新四段誕生 少数派となった戦法「ノーマル三間飛車」にこだわり、夢を目指す : スポーツ報知
私個人は居飛車党で振り飛車はほぼ指さないのですが、鑑賞するのはいつも楽しみにしています。山本四段のデビュー戦も、今からとても楽しみです。
四間飛車vs居飛車急戦……なのか? 川上猛七段vs田中悠一五段戦を振り返る
ここのところタイトル戦、A級順位戦、王将戦リーグ、JT杯などトップ棋士同士の注目戦が目白押しですが、中堅棋士にも注目すべき戦いが少なくありません。
10月1日、第67期王座戦の一次予選で川上猛七段vs田中悠一五段が行われました。これがまたアマチュア好みの戦型となったのです。
後手のノーマル四間飛車に対して、▲5七銀左と上がった川上七段。プロ棋戦ではすっかり見られなくなった急戦の形です。棋譜コメントには「前例の数こそ多いが、今年に入ってからは飯塚裕紀七段しか指していないようだ。」との記述が。
プロ間ではそれほどまでに勝ちにくいと見なされてしまっているわけですが、わりと最近には青野照市九段が阿久津主税八段に快勝した将棋があります。
こうした例もありますので、完全にプロの将棋から消えてしまうこともないのではと思います。
さて川上田中戦ですが、すぐに駒がぶつかるかと思いきや、じりじりした展開に。
ただでさえ薄い先手玉をさらに薄くしてしまう金上がり。なかなか見た記憶がありません。
このあと数手して、ついに開戦しました。終始混沌とした形勢でしたが、熱戦を制したのは居飛車側、川上七段でした。急戦の定義は早めに相手を攻めることですが、この将棋は急戦のようなそうでもないような、珍しく面白い形でした。
いずれにしても四間飛車に対しては居飛車穴熊、プロだとどうしてもそうした将棋になりがちです。しかし忘れた頃にこういう戦型で戦ってくれるプロは貴重ですし、応援したいと感じます。