Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

将来が楽しみ! 花の女子高生棋士3人組

 2016年に中学生棋士としてデビューした藤井聡太七段は、今年度からは高校生棋士となっています。
 さて、女流棋界にも現在3人の高校生棋士がいます。小高佐季子さん、水町みゆさん、加藤結李愛さん。3人とも女流2級です。

参考リンク:昇段規定 |棋戦|日本将棋連盟

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 小高さんは2002年生まれの16歳。2017年6月に女流3級デビューし、2018年2月に女流名人戦の予選で決勝まで進出し、「『女流棋士昇段級規定』の女流1級に該当した場合」を満たして、女流2級へ昇級しました。

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 水町さんは2001年生まれの17歳。今年度から女流棋士規定が変更になって女流3級が廃止されたのですが、研修会B2クラスにまで上っていた水町さんは、新規定による第1号として2018年5月に女流2級デビューをしました。

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 加藤さんは2003年生まれの15歳。女流棋士で最年少ということになります。2018年4月に女流3級になると、7月にはマイナビ女子オープンの予選決勝で水町さんを破って本戦出場、「『女流棋士昇段級規定』の女流1級に該当した場合」を満たして、女流2級へ昇級しました。
 加藤さんはつい先日、マイナビ女子オープン本戦でタイトル戦の常連である伊藤沙恵女流二段と対決しました。惜しくも敗れはしましたが、中盤までは互角の戦いを演じており、力のあるところを見せていました。


 まだまだデビューしたばかりの3人ですが、数年後にはタイトル争いをするほどに成長しているということもあるでしょう。聞き手としての活躍も、今から楽しみです。

女の子同士の将棋漫画! 『如月さんは将棋がしたい』

 非商業ベースのSNS上にアップされた将棋漫画について、当ブログでは何度か取り上げてきました。

araishogi.hatenablog.com

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 そしてまた、新たな作品が生まれましたのでご紹介します。

 ponさんによる『如月さんは将棋がしたい』。今どきって感じのタイトルですね。
 語り部の加子ちゃんとその友人の如月さんが、のんびりと将棋を指す――という内容の4コマ漫画です。

こんなに将棋っておもしろいのに なんでみんなやらないんだろ

 この素朴なセリフが、実にいい感じです。
 ⑫でいったん終わりとなっていますが、また気が向いたときにでも描いていただけたら……と期待しております。

 ところで4コマの将棋漫画といえばそのものずばり、『よん駒!』という作品がありますし、『紅井さんは今日も詰んでる。』もそうです。学園×将棋×女の子×4コマ、これ結構相性がいいんじゃないかと思うんですよね。私も原作を書いてみたいです。

よん駒! (ヤングガンガンコミックス)

よん駒! (ヤングガンガンコミックス)

 
紅井さんは今日も詰んでる。(1) (ヤングガンガンコミックス)

紅井さんは今日も詰んでる。(1) (ヤングガンガンコミックス)

 

ヒューリック杯棋聖戦の二次予選表が発表。これがなかなか面白い

 本日の王位戦七番勝負最終局で、挑戦者の豊島将之棋聖が菅井竜也王位を破り、奪取に成功しました。これで棋聖と合わせての二冠です。タイトルを2つ奪取となれば、今年度の最優秀棋士賞の有力候補に、早くも名乗り出たことになります。

 豊島二冠は今後、手にしたタイトルを守るための戦いもしていくことになりますが、ヒューリック杯棋聖戦の二次予選の対戦表が発表されました。

第90期棋聖戦二次予選

 棋聖戦にはひとつ大きな特徴があります。それは五番勝負に出場したことのある棋士は二次予選にシードされるということです。
 このシステムにより、他の棋戦の二次予選ではあまり見られない組み合わせが見られることがあります。つまり現在のトッププロや若手俊英と、かつてタイトル争いをした往年のトッププロがぶつかることがあるのです。
 たとえば五番勝負に二度出場したことがある加藤一二三九段は、引退直前の2017年初頭、二次予選で飯島栄治七段に完勝し、史上最高齢勝利という栄光を掴みました。また佐藤天彦名人とも激闘を繰り広げ、すべての実力制名人と対局するという記録も作っています。

 今回の二次予選、過去に五番勝負に出場したことがある最年長の棋士は桐山清澄九段です。桐山九段は以前も記事に書いたように、現役最高齢で通算1000勝の大記録を間近にしています。この棋聖戦二次予選が、その記録のための足がかりとなるでしょうか。注目して見ていきましょう。

豊島の将棋 実戦と研究 (マイナビ将棋BOOKS)

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人気シリーズ『日本史探偵コナン』に将棋編「命がけの棋譜(バトルロード)」が登場!

 言わずとしれた人気ミステリー漫画『名探偵コナン』のスピンオフシリーズに『日本史探偵コナン』というものがあります。

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 コナンたち少年探偵団と一緒に日本の歴史を学べるというコンセプトですが、将棋ファンにとっても見逃せないエピソードが発売されるようです。

 その名も将棋編「命がけの棋譜(バトルロード)」。棋譜と書いてバトルロードと読みます。
 コナンには以前に将棋回が描かれたことがあり、ツイートにある秀吉とはそのときに登場した羽田秀吉のようです。いろいろ興味が尽きませんが、来月の発売日を心待ちにしましょう。

日本史探偵コナンアナザー 将棋編 命がけの棋譜: 名探偵コナン歴史まんが

日本史探偵コナンアナザー 将棋編 命がけの棋譜: 名探偵コナン歴史まんが

 

香川愛生女流三段、株式会社を設立していた

 昨日23日の東京新聞、読書欄に香川愛生女流三段の記事が掲載されました。ウェブでも読めます。

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 先月に出版した『職業、女流棋士』が紹介されたのですが、それよりも驚いたのが、香川さんが起業していたということです。

今年、普及活動を企画・立案する株式会社も設立した。

 これしか触れられておらず、香川さんも今まで告知等はしていなかったと思うのですが、まだいろいろ準備中ということなのでしょう。
 これまでにも女流棋士が会社を興した例はあります。

 具体的にどういう事業内容になるのかはわかりませんが、経営で相談できそうな先輩が周りにいるのは幸いだと思います。ぜひ注目していきましょう。

職業、女流棋士 (マイナビ新書)

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6人目の中学生棋士誕生の可能性も! 最年少の上野裕寿さんが奨励会三段リーグに参戦

 10月から開幕する第64回奨励会三段リーグの対戦表が発表になりました。

第64回奨励会三段リーグ戦

 史上初の女性棋士を目指す西山朋佳さん、前回初参戦で藤井聡太七段と同学年である伊藤匠さん、先日も記事を書いた谷合廣紀さんと要チェックの人が目白押しですが、今回からもうひとり注目株が参戦します。関西の名門、井上慶太九段門下の上野裕寿さんです。

 上野さんは現在15歳の中学三年生。すなわち今回1期抜けするようなら、藤井七段に続く6人目の中学生棋士となるのです。
※中学生棋士の定義は「中学校在学中にプロ入りを決めた人」です。

 また、上野さんは2015年の小学生名人戦で入賞しています。当時はまだ純粋なアマチュアだったわけですが、その後奨励会入りしてほんの3年ほどで三段まで駆け上がった計算です。これは歴代でもトップクラスの昇段スピード。才能は疑うべくもありません。

www.shogi.or.jp

 運に左右されることもある三段リーグですが、最下位で上位2名に入るには、相当な勝ち星を挙げなければなりません。半年に渡る長い戦い、はたしてどうなるか注目していきましょう。

奨励会 ?将棋プロ棋士への細い道? (マイナビ新書)

奨励会 ~将棋プロ棋士への細い道~ (マイナビ新書)

 

「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査の件、ほんの少し進展がありました

 先日、ネット上に広まっている出典不明の「羽生善治語録」について取り上げました。

araishogi.hatenablog.com

 この件で疑問に思っている人はやはり多いようで、特にこちらの記事でとても詳しく調査されています。

羽生善治は「超一流は人の話を聞いて工夫する」と言ったのか、プロジェクト・グーテンベルク - ネットロアをめぐる冒険

 膨大な羽生さん関連の書籍が調べられているのですが、例の発言は確認できなかったとのこと。それにしてもこの調査量には頭が下がります……。

 私も私でのんびり調べてみようと思っていたのですが、気になる情報を見かけていました。『文藝春秋』の2003年の号に関連記述があるというものなのですが、そこでヤフオクから2003年11月号を手に入れて、実際に調べてみました。
 そうすると、こんな記述がありました。

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 北海道警察警部補・剣道錬士七段(当時)の栄花直輝さんという方が執筆した【最強剣士「現代の武蔵」ここにあり】というエッセイです。剣道界ではとても有名な方のようです。※このタイトルは編集者が付けたんでしょうね。

最近、なるほど、と心に残ったのは、将棋の羽生善治さんの本のなかに、三流の人は人の話を聞かない、二流は人の話を聞くだけ、一流になると人の話を聞いて実行し、超一流はさらにそれを工夫してやる、とあったことです。
(中略)
さすがに羽生さんクラスの名人となると、どの世界にも通用する域に達しているのだなあ、と感心しました。(文藝春秋2003年11月号 P217)

 前回紹介した『どんな人にも大切な「売る力」ノート』の記述とほとんど変わりません。ただしこれも出典元が書かれておらず……。
 とはいえ、わかったこと、可能性が高まったことはあります。

  1. 羽生さんが本当に発言していたとしたら、2003年以前の書籍である(テレビ番組や講演での発言ではない)
  2. 「羽生善治さんの本」とあるので、将棋世界や週刊誌等の雑誌ではない
  3. 『どんな人にも大切な「売る力」ノート』の著者・津田晃氏の創作や思い違いという線は薄い

 1と2はそのままです。3ですが、津田氏は一流のビジネスマンなので、文藝春秋を購読している可能性はあるでしょう。そしてこの箇所を備忘として書き留めておき、「羽生善治名人の言葉です」と、少し形を整えて著書に引用した(本当かどうか調べはせずに)ということは十分に考えられます。

「ネットロアをめぐる冒険」さんの調査では棋書の類はカバーしていないとのことでしたので、そのあたりを調べる必要もあるかもしれません。たとえば棋書の中にコラムがあって、そこに書かれていたとか。
 しかしやはり、羽生さんはそんなこと言わないという気持ちも依然として強いです。ほとんどの羽生ファンがそうだろうと思います。
 そこで可能性として思い当たったのは、

  1. 誰かの発言を羽生さんが自著の中で紹介した
  2. 羽生さんの対談相手が発言した

 というケースです。このいずれでも「羽生善治さんの本に書いてあった」とは矛盾しないですよね。栄花氏がこのあたりのことを誤って解釈してしまった……という可能性です。

 ともあれ調べるべき書籍は、ある程度絞り込めた気がします。また進展があれば記事にします。

【続きの記事】「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査の件、難航中です ※進展がないのに書いちゃいました。

超越の棋士 羽生善治との対話

超越の棋士 羽生善治との対話

 

ソフト開発に書籍出版。最強頭脳集団・東京大学の将棋との関わり

 先日、奨励会三段にして東大院生の谷合廣紀さんが出版デビューしたことを記事にしました。検索でこのページにやって来る人がずいぶん多く、注目されているようです。

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 さて、東大といえば大学将棋の強豪として以前から知られています。それだけでなくソフト開発や出版においても、将棋界と密接な関わりを持ってきました。
 世界コンピュータ将棋選手権で4回も優勝したこともある『IS将棋』は『東大将棋』シリーズとして発売され、一時代を築いたソフトのひとつとなりました。また、『角交換振り穴スペシャル』という書籍が人気となりました。ちなみにこれ、角交換系の振り飛車がメジャーになる前の出版です。

角交換振り穴スペシャル (マイコミ将棋BOOKS)

角交換振り穴スペシャル (マイコミ将棋BOOKS)

  • 作者: 東大将棋部
  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 そしてこのたび、東大将棋部が新たな本を出版しました。

『勝つための将棋 入門編』。監修を務めたのは史上初の東大生棋士として知られる片上大輔七段です。

入門編は初めて将棋を覚える人に向けて、盤について、駒について、基本ルールのほか、大事なマナーや反則について解説します。

 年少者向けかつ初心者向けの入門書となっていますので、これから将棋を覚えたいという子供を持つ親御さんにはピッタリかと思います。

勝つための将棋 入門編

勝つための将棋 入門編

 

初級者から有段者までおすすめ! 『奇襲の王様 筋違い角のすべて』

 奇襲戦法の一種に「筋違い角」というものがあります。

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 ▲7六歩、△3四歩となったら角交換し、即座に▲4五角と打ちます(初型の筋からずれるので筋違い角と言います)。この局面、後手は▲6三角成とされるわけにはいかないので、その地点を銀か金で守ることになりますが、そうすると先手は3四にある歩を確実にせしめることができます。
 そしてこの戦法のメリットはもうひとつあり、後手は角成りを防ごうと動かした銀や金が邪魔をして、飛車を振れなくなります。
 すなわち「振り飛車封じ」戦法でもあります。アマチュアは振り飛車を愛用する人も多いので、その時点で戸惑わせることもできるわけです。

 そんな筋違い角戦法ですが、現在のプロ間では「一歩確実に得られるメリットより、角を温存しているメリットのほうが大きい」とされ、公式戦で見ることはまずありません。しかしこの戦法を愛用していた棋士もいました。2014年に引退した武市三郎七段です。

 これは2013年末のことですが、私もこの対局を見ていました。めったに見られない戦型ということで、少なくない将棋ファンが盛り上がっていた記憶があります。

 私の考えでは、使われないというのはあくまでプロ間の話、アマチュアの間なら十分に通用します。実際、痛い目に遭ったことが何度もあります。
 筋違い角を指してみたいという人は結構多いと思うのですが、朗報です。このたび武市七段が筋違い角の集大成というべき戦術書を出版されます。

奇襲の王様 筋違い角のすべて (マイナビ将棋BOOKS)

奇襲の王様 筋違い角のすべて (マイナビ将棋BOOKS)

 

『奇襲の王様 筋違い角のすべて』。非常にストレートなタイトルですね。共著として名を連ねている美馬和夫さんは、アマチュア強豪として知られている方です。

「この本を読み、相手が読んでいなければ、きっと面白い戦いができるでしょう」

 とのことで、何かひとつ隠し球を身につけたい人にはピッタリではないでしょうか。

奨励会三段の谷合廣紀さん、プログラミング系の技術書で出版デビュー

 将棋関係者が出版するケースと言えば、もちろん将棋に関することです。戦術書や詰将棋、棋界にまつわるエッセイなどなど。しかしこのたび、ものすごく異色な出版デビューをした方が現れました。

Pythonで理解する統計解析の基礎

Pythonで理解する統計解析の基礎

 

 奨励会三段の谷合廣紀さんが執筆した『Pythonで理解する統計解析の基礎』。
 谷合さんは実は東大院生でもあり、現在は修士として「坂井・入江研究室」に所属されています。私はこの分野はさっぱりですが、難しく有意義なことをされているのだろうなと思います。

坂井・入江研究室 [東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻/東京大学工学部電気系学科]

 先日まで行われていた第63回三段リーグでは、谷合さんは11勝7敗でした。過去に次点を取っているほどの実力者で、プロに限りなく近いと言えます。
 しかしそんな実力者が何人も涙を飲んできたのが三段リーグという世界……。なんとか報われてほしいと願うばかりです。