Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

先崎学九段の『うつ病九段』が漫画化

【参考記事】空前の売れ行きが予想される先崎学九段の新刊『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』

 本日から文春オンラインにて、先崎学九段のノンフィクション『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』の漫画版が連載開始しました。

 作画を手がけるのは河井克夫さん(@osuwari)。漫画だけでなく俳優など、多方面で活躍している方です。
 冒頭で、いわゆる「将棋ソフト不正使用疑惑」について軽く触れられています。初めて見た方は、不正をした棋士がいたのか? なんて誤解してしまうかもしれませんね。今は正確には「将棋ソフト冤罪問題」とでも言うべきで、この記事を読んでいる方の中にはあまりいないと思いますが、もしこの問題を知らない人がいましたら、検索して調べてみてください。

 それはともかく、漫画というわかりやすい形でこの作品が知られるのは、よいことだと思います。ぜひ単行本化まで実現してほしいですね。

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)

 

将棋連盟は堀口一史座七段を全力で守るべき!

 先日行われたC級1組順位戦の堀口一史座七段VS藤井聡太七段は、藤井七段が勝利しました。

 そして将棋ファンにとっては心苦しい事態になってしまいました。対局前から対局後にかけての堀口七段の様子が、「面白おかしいニュース」として出回ってしまったのです。対局前に何やらポーズを取ったことについては、注目の一戦ということでちょっとおどけてみせただけ、と私は思っていますが……(無論、好ましいことではないでしょう)。

www.shogi.or.jp

 堀口七段は棋戦優勝経験があり、順位戦ではB級1組にまで昇級した、大半の棋士よりも実績を積み重ねてきた強豪棋士です。このあたりについては、将棋ライターの松本博文さんの記事をご覧いただければひととおり知ることができます。

news.yahoo.co.jp

 将棋連盟の仕事のひとつが、所属棋士の名誉を守ることです。しかし今回、このようなことになってしまいました。
 病名は非公表ですが、どの対局でも早指し早投げせざるを得ないほど堀口七段の体調が悪化しているらしいことは、将棋連盟上層部はわかっていたはずです(「心の病」と断定している人もいますが、あくまで病名は非公表です)。いかに注目の藤井七段戦とはいえ、これを生中継しては堀口七段が「晒し者」になってしまう可能性は、ある程度予想できたはずです。AbemaTVにも無用な批判の矛先が向けられることになってしまいました。

 休場して静養するのが一番なのでしょうが、堀口七段にはどうしても休場できない理由があるのかもしれません。
 そうだとしても将棋連盟は、これは堀口七段本人の問題と放置していいものではないでしょう。どうか十分にケアし、サポートしてもらいたい。今回の事態を受けて、すでに本格的に動いている……と信じたいものです。

将棋連盟は棋譜・局面図のネット上での扱いについて公式見解を示してほしい

 ここ数日話題になっていますが、将棋連盟Liveアプリのアップデートが行われ、局面図ツイート機能が削除されました。
 どういう機能かというと、当ブログでも先日こんな記事を書きました。

【参考記事】新たなる棒銀の使い手! 服部慎一郎三段が公式戦連勝

 この機能はTwitterをやっている多くの将棋ファンが活用していました。「これは驚愕の一手!」とか、「こんな面白い棋譜コメントがあった」とか。何と言っても公式の機能だったので、誰もが遠慮なくツイートしていたわけです。
 ところが今回の機能削除。先日連盟理事に就任した西尾明七段によれば、「権利上の関係」ということでした。

 そして将棋連盟に問い合わせた方もいました。

 多くの人が想像していたと思いますが、棋戦主催者であるスポンサー(新聞社)からの要請ということで間違いはないようです。
 また、将棋ファンである伊藤雅浩弁護士(伊藤匠三段の父)は、この件に関しては否定的な見解を示しています。

 棋譜自体に著作権はない、とされているのですが、公式戦の棋譜・局面図の扱いについては、たびたび話題になります。以前にも藤井聡太七段が登場した朝日杯で、棋譜を元にリアルタイムで実況していた動画配信者が朝日新聞社から警告され、配信を取りやめるということがありました。

www.itmedia.co.jp

 私はこの件については「それは当然だろう」と納得していますし、スポンサーの利益獲得を阻害するようなことは、ファンとしては厳に慎まなければならないと思っています。さもなければ、契約金を支払ってスポンサーになろうという企業がなくなってしまいます。伊藤弁護士も同様の見解を示しています。

 整理すると、

  1. 棋譜そのものに著作権はない
  2. 棋譜コメントや観戦記には権利が発生する
  3. 無断のリアルタイム実況などスポンサーの商売の邪魔になることは慎むべき

 このあたりはほとんどの将棋ファンの間で意識が共有されていることと思います。

 

 しかし今回の将棋連盟Liveアプリのツイート機能削除は、いささか唐突でした。アプリの機能を削除するなら、普通は事前にスケジュールを決めて「諸般の事情につき、この日に削除します」などと予告するものです。今回は「スポンサーへの配慮ということなら仕方ない」と理解を示している人が多いはずですが、どんな理由があれ今まで使えていた機能が予告なく削除されれば、余計に物議を醸すのは当然です。 

 そして一番の問題は何かといえば、肝心の将棋連盟が棋譜・局面図のネット上での扱いについて、今まで公式の見解を示したことがないということです。少なくとも現在、将棋連盟サイトでは確認できません。

 どうも、何かにつけ将棋連盟は後手後手というか説明不足という印象なのです。「あまりガチガチにガイドラインを決めるのはよくない」とか、そうした声も上がってきそうですが、棋譜はプロ棋士の心血を注いだ成果物です。だからこそそれを管理する将棋連盟には、はっきりした見解を示してほしい。

 ということですので、時間はかかるでしょうが、ぜひ新体制の理事会とスポンサー各社には活発な議論を交わしてほしいと思います。あとできれば、法律のプロも交えて。

大人気ほのぼの将棋漫画『それでも歩は寄せてくる』発売前から重版決定!

【参考記事】山本崇一朗さんの将棋漫画『それでも歩は寄せてくる』が来週から連載開始!

 現在、週刊少年マガジンで連載中の『それでも歩は寄せてくる』。いよいよ来週にコミックス第1巻が発売されるのですが、なんと発売前から重版が決定したそうです。

 作者の山本崇一朗さんが、もともと大人気作家であることが大きいのは言うまでもないのですが、それにしても発売前から重版というのは、もしかしたら将棋漫画史上初めてなのでは? とにもかくにも楽しみです。

 というかすでにアニメ化企画とか、動いていたりして。

それでも歩は寄せてくる(1) (KCデラックス)

それでも歩は寄せてくる(1) (KCデラックス)

 

『将棋番組が10倍楽しくなる本』が重版しました

 先月に出版した、私の将棋ライターデビュー本『将棋番組が10倍楽しくなる本』ですが、このたび重版しました。

f:id:araicreate:20190620173945p:plain

 実は刊行直後から、重版するかもというお話は出版社から聞いていたのです。ホントにそうなったらいいなーと思っていましたが、実現してしまいました。それもこれも、全国の書店と将棋ファンの方々のおかげです。ありがとうございます。

 実を言うと初版には若干の誤字があったりしたのですが、第2版では直っている、かと思います。Amazonでもおおむね好評をいただいているので、少しでも興味のある方は、ぜひ重版分から手に取っていただければ幸いです。

将棋文化・歴史・専門用語がわかる! 将棋番組が10倍楽しくなる本

将棋文化・歴史・専門用語がわかる! 将棋番組が10倍楽しくなる本

 

新たな観る将本に注目! 『将棋「観る将になれるかな」会議』

 先日、第31回将棋ペンクラブ大賞の最終選考候補作が発表されました。

 私は毎年、文芸部門に注目しているのですが、今回はそれ以上に技術部門の候補作に目を惹かれました。高野秀行六段、岡部敬史さん、さくらはな。さんの共著『将棋「初段になれるかな」会議』(扶桑社)です。

【参考記事】角の利きは3万回確認! 将棋ファン発の格言(?)が書籍に掲載

 この部門はだいたいプロ棋士による有段者向けの本がノミネートされるという印象でしたが、プロとアマチュアとの共著、しかも初段を目指そうという、明確な級位者向けの本がノミネートされるのは、珍しいのではないでしょうか。

 そして、この執筆陣による第二弾が今月末に刊行されます。

将棋「観る将になれるかな」会議 (扶桑社新書)

将棋「観る将になれるかな」会議 (扶桑社新書)

 

 その名も『将棋「観る将になれるかな」会議』。なんとビックリ、観る将向けの本です。ちょうど私も同様のテーマの『将棋番組が10倍楽しくなる本』を刊行したばかりで、何だか親近感が湧いてきます。Amazonに内容紹介がありましたが、私の本と比べると、かなりコアな部分も取り上げられるようです。「盤を離れているとき、何をしているの?」「対局のときに持っていくもの」などは、プロ棋士に直接聞かなければ書けないでしょうし。

 というわけで観る将の方々、要注目です。

羽生善治九段と杉本昌隆八段、8年ぶりの対局へ

 第45期棋王戦の挑戦者決定トーナメント表が発表されました。

第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント/五番勝負

 ご覧の通り、上り調子の若手、脂の乗った中堅、そしてトッププロがひしめきあう厳しいトーナメントですが、そんな中で数少ないベテランとして杉本昌隆八段の名前があります。
 そしてその対戦相手は、羽生善治九段です。両者の最後の対戦は、8年前の第19期銀河戦までさかのぼるようです。

第19期 銀河戦 本戦Dブロック 11回戦

 この8年ぶりの対局、おそらくお昼のワイドショーなどでも取り上げられるのではないでしょうか。今から楽しみですね。

 杉本八段は、近年は藤井聡太七段の師匠として有名になっています。しかし前年度の順位戦C級1組において、この年代としてはあまり例がない再昇級を果たすなど、「中年の星」としての存在感も増しています。
 挑決トーナメント入りしている50代の棋士は、他には谷川浩司九段と畠山鎮七段のふたりしかいません。ぜひベテランパワーを発揮して、ファンを沸かせて欲しいものです。

羽生流・決断の極意 『決断力』+『大局観』【2冊 合本版】 (角川新書)

羽生流・決断の極意 『決断力』+『大局観』【2冊 合本版】 (角川新書)

 
弟子・藤井聡太の学び方

弟子・藤井聡太の学び方

 

将棋会館移転を機に、ぜひとも椅子対局を導入してほしい

 既報の通り、老朽化問題を抱えていた将棋会館は、現在の千駄ヶ谷と同じ「千駄ヶ谷センタービル」への移転が決定しました。

www.sponichi.co.jp

 この建物を所有しているのが、棋聖戦と清麗戦のスポンサーをしている株式会社ヒューリックです。前々から建て替えが予定されていたのですが、将棋連盟が新築ビルの一部を取得する方向で決まりました。移転時期は2024年をめどにしているとのことです。
 本来なら現在のような自社ビルが最善なのでしょうが、今回の移転案も限りなくそれに近いのではないでしょうか。将棋界に理解のあるヒューリックですから、将棋ファンの望む形になるのではないかと期待しています。


 この問題のために、羽生善治九段が対局の合間に奔走していたことも報道されましたが、少々無理がたたったのでしょうか、脚を怪我されてしまったようです。

 この一連のツイートを見て、思ったことがあります。それは将棋会館移転を機に、ぜひとも椅子対局を導入してほしいということです。

 将棋棋士と椅子対局を巡る問題は以前からあり、有名なのは升田幸三実力制第四代名人が、椅子対局を申し入れたものの却下された、というエピソードです。

【勝負師たちの系譜】新手一生を目指した升田名人、賞創設で永遠に残る名に 最初の受賞者は内藤九段 (1/2ページ) - zakzak

 近年では、2015年に引退した内藤國雄九段が「膝と腰が痛くて長時間座って対局することができなくなった」と明かしています。内藤九段は当時、順位戦C級2組所属で降級点が2つという状況でした。順位戦規定で引退したわけではなく、健康問題が大きかったのです。もし椅子対局があったら、引退をもう少し伸ばされたかもしれません。

将棋の内藤國雄九段が引退表明/芸能/デイリースポーツ online

 お隣の囲碁界では、世界的競技という背景もあり、椅子対局がスタンダードです。将棋のような和室で対局というのはごく一部に留まっています。
 これまでは和室中心という建物の構造上、椅子対局の導入は難しかったかもしれません。しかし新しい将棋会館に移るにあたり、いよいよ本格的に議論できると思います。ぜひ棋士の間でも積極的に話題にしていただきたいです。

羽生善治九段による観る将向け将棋ガイド『教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」』

 先日、羽生善治九段が大山康晴十五世名人の持っていた歴代最多勝記録を塗り替えました。

 無冠となっても依然として注目が集まる、現代将棋の第一人者である羽生九段ですが、このたび興味深い書籍を出版されるようです。

教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」 (講談社現代新書)

教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」 (講談社現代新書)

 

将棋は指さなくても面白い。「観るファン」のための初めての本格的将棋ガイド。羽生永世七冠、梅原猛氏らが将棋の魅力を語り尽くす!

 とのことです。
 私もちょうど観る将向けの『将棋番組が10倍楽しくなる本』を刊行したばかりですが、他ならぬプロ棋士からこういうタイプの本が出版されることは、今後ますます増えるんじゃないかなと予想します。

「ありがとう平成!記念免状授与式」にて三段の免状をいただきました

 本日、東西の将棋会館で「ありがとう平成!記念免状授与式」というイベントが行われ、私も出席しました。

www.shogi.or.jp

 前々から免状を取得してみたいと思っていたのですが、これ以上の記念はないだろうと思ったので申し込んでいたのです。
 段位は三段です。81Dojoで以前に到達したことがあり、これを元に申請しました。将棋倶楽部24では最近1級になったのですが、棋力対応表を見るに、それなりに妥当な段位なのかなと思います。
 しかし出来不出来が激しいという自覚はあり、瞬間的には三段の実力を発揮することもある――くらいに思っています。本当の三段には今少し及ばない、と。

 それでもあえて三段で申請し、このたび取得したのは、来年には将棋連盟の普及指導員の資格を取りたいと思っているからです。
 藤井聡太七段の影響で将棋ブームと言われていますが、実際にはこういった報道もあります。

www.oita-press.co.jp

 将棋を的確に指導できる人はまだまだ足りず、せっかく将棋に興味を持った人もなかなか定着しない……ということです。これではいけない。この将棋ブームを継続させるために、私も微力ながら力を尽くしたいと思っています。

f:id:araicreate:20190601185628j:plain

 こうして免状を正式にいただいたからには、もう後戻りできません。まずはこの1年、真の三段として胸を張れるようにしっかり修行するつもりです。

初段になるための将棋勉強法

初段になるための将棋勉強法