Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

正規プロを目指す藤井奈々女流3級、試練の2年目は好調スタート

 今年度から女流棋士規定が変更され、いわば仮免許である女流3級が今後はなくなるということを以前にも書きました。

女流棋士になるための規定、LPSAも将棋連盟と歩調を合わせる - Arai Koh's Shogi Life

 しかし現在女流3級の人は、それまでどおりの規定で正規プロを目指している最中です。そのうちのひとりが藤井奈々女流3級です。

www.shogi.or.jp

 藤井さんは京都府出身の20歳。女流3級となったのは2017年2月20日のことです。
 2年以内に規定の成績を挙げれば、晴れて女流2級となることができるのですが、2017年度は1勝もできずに終わるという、かなり厳しい状況となっていました。
 ところが今年度に入ってからは4戦して全勝と、それまでの遅れを取り戻すには十分な活躍をしています。特に倉敷藤花戦の2回戦で、現在女流王位戦にも挑戦している実力者・渡部愛女流二段から挙げた白星が光ります。これで強くないはずがありません。

 では、女流2級に上がるための昇段規定を見てみましょう。

  • YAMADA女流チャレンジ杯ベスト4
  • 1年間で参加公式棋戦数と同数の勝星を得る。
  • 2年間で参加公式棋戦数の4分の3以上の勝星を得る。
  • 「女流棋士昇段級規定」の女流1級に該当した場合。

 藤井さんは2番目を除くすべてで可能性があるわけですが、4番目の女流1級への条件をさらに見てみましょう。

  • マイナビ女子オープン本戦入り
  • 女流王座戦本戦入り
  • 女流名人予選決勝進出
  • 女流王位リーグ入り
  • 霧島酒造杯女流王将戦本戦入り
  • 倉敷藤花戦ベスト8
  • YAMADA女流チャレンジ杯決勝進出
  • 女流2級昇級後の対局で、年度成績指し分け以上(7勝以上)
  • 女流2級昇級後30勝

 藤井さんは現在女流王座戦の二次予選と、倉敷藤花戦の3回戦(ベスト16)に進出しています。日程的に一番早い昇級の可能性としては、このどちらかでの勝利ということになりそうです。次に近いのがYAMADA女流チャレンジ杯のベスト4、先頃五番勝負が終わったマイナビ女子オープンの予選は夏ですね。
 逆に言うとこれらを逃せば、かなり厳しくなります。「2年間で参加公式棋戦数の4分の3以上の勝星を得る」を満たす以外になくなりますが、具体的に計算すると、

参加公式棋戦数は7なので、2年間では14。その4分の3以上なので11。

 藤井さんは現在通算4勝しているので、あと7勝が必要です。トーナメントは負けたら終わりなので、1棋戦でも敗退すればそれだけチャンスがなくなってしまいます。

 しかし間違いなく実力はある人ですから、この厳しさも乗り越えてくれるのではないでしょうか。そしていずれは女流棋界にも藤井あり、をアピールしていただきたいところです。

伊奈川愛菓女流初段、復帰後負け知らずの4連勝!

 本日はマイナビ女子オープン五番勝負の第4局があり、西山朋佳三段が加藤桃子女王を破り、念願の初タイトルを手にしました。
 しかし女流棋界にはもうひとつ、見逃せないニュースがありました。

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 当ブログでたびたび取り上げている伊奈川愛菓女流初段が、先日の倉敷藤花戦2回戦で貞升南女流初段に勝利していたのです。
 これで復帰後は負け知らずの4連勝、本当に驚きです。とても2年間のブランクがあったとは思えません。この快進撃はどこまで続くのでしょうか?

 それでは伊奈川さんの今後の予定をまとめてみましょう。

マイナビ女子オープン:予選の組み合わせ発表待ち
女流王座戦二次予選進出、次は山口恵梨子女流二段と対戦
女流名人戦:復帰前に予選が始まったため、今期は未出場
女流王位戦:予選の組み合わせ発表待ち
女流王将戦:復帰前に予選が始まったため、今期は未出場
倉敷藤花戦3回戦進出、次は藤井奈々女流3級と対戦
YAMADA女流チャレンジ杯1回戦で高浜愛子女流2級と対戦

 大一番はやはり女流王座戦でしょうか。山口恵梨子女流二段はイベントに聞き手に引っ張りだこの、女流棋士の中でも特に人気の人ですが、将棋のほうは「攻める大和撫子」と称されるほどの強烈な攻めで評判です。
 女流棋戦は予選だとなかなか中継されないのですが、この一番はぜひともモバイル中継で見たいものです。

今年度も好調! 大橋貴洸四段の躍進

 以前に書いた大橋貴洸四段の記事、数ある記事の中でもよく読まれています。やはり人気の若手棋士のことを知りたい人は多いようですね。

araishogi.hatenablog.com

 今年度に入ってからも、大橋四段は好調をキープしています。各ランキングは以下のとおりです。※2018年5月22日対局分まで(未放映のテレビ対局を除く)

  • 6勝2敗
  • 対局数ランキング:同率3位
  • 勝数ランキング:同率3位
  • 連勝ランキング:同率3位

 棋戦別に見ると、竜王戦6組ランキング戦の決勝進出が光ります。5組への昇級を決め、あと1つ勝てば挑戦者決定トーナメント進出です。
 そして先日発表された超早指し棋戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の出場者に選ばれています。

 シード棋士以外の出場者は、すべて勢いのある若手や中堅です。大橋四段が選ばれたのも納得ですね。どんな色のスーツを着るのか、今からワクワクです。

 さらに現在、棋書の執筆にも取りかかっているようです。

 対局に執筆に、ますます忙しくなりそうな大橋四段。明日も王将戦一次予選で対局があり、モバイル中継もされます。しっかりチェックしましょう!

目からウロコ! 0手詰の詰将棋

 昨晩、宮本広志五段がこんなをツイートをされていました。

 0手詰! お前はもう詰んでいる、と思わず言いたくなってしまいます。

 3手詰、1手詰といったきわめて短手数の詰将棋本が人気になったのは、比較的最近のことです。 
 そこで提唱された0手詰。これは目からウロコではないでしょうか。そもそも初心者は、どういう形が詰んでいるのかよくわからないのだと思います。0手詰の本がもし出たら、きっと今までにないものだと評判になるはず! というかどこか、宮本五段にオファーを出すべきでしょう!

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 出たとしたら、とりあえず第1問目はこれですかね?

藤井聡太推薦!  将棋が強くなる実戦1手詰

藤井聡太推薦! 将棋が強くなる実戦1手詰

 

またひとつ将棋漫画が誕生! 『リボーンの棋士』

 先週、週刊少年ジャンプで『紅葉の棋節』という将棋漫画がスタートしましたが、青年誌のほうでもこんな作品が。

 週刊ビッグコミックスピリッツで連載開始する『リボーンの棋士』。まったく事前情報はキャッチしていなかったので驚きました。作者は鍋倉夫さん。どうやらデビューしてからそう経っていない若手作家のようです。
 そして監修は鈴木肇さん。元奨励会三段のアマチュア強豪で、最近新聞でも取り上げられましたね。

www.sankei.com

 掲載誌のカラーからすると、骨太の人間ドラマが展開されそうです。それにしても、いろんな雑誌で将棋漫画が連載されるというのは本当に喜ばしいかぎり。

藤井聡太七段誕生! そして九段への最短ルートは?

 つい先ほど、藤井聡太六段が竜王戦5組ランキング戦準決勝において船江恒平六段に勝ち、七段昇段を決めました。

 ↓の記事を書いたのは1月だったのですが、本当にここで想定したとおりの展開になってしまいました。とんでもなさすぎる!

araishogi.hatenablog.com

 さて、彼の昇段には多くの人が興味津々のようで、今日はこの記事のアクセスも増えていました。

araishogi.hatenablog.com

 執筆時点から状況が少し変わっているので、整理しましょう。
 九段になるための最短ルートである「タイトル3期獲得」ですが、王座戦と竜王戦は勝ち残っているのですが、3つめの王将戦は、すでに敗退しています。
 しかし王将戦七番勝負とほぼ同時期に開催される棋王戦五番勝負があります。藤井七段は現在、この棋王戦の予選決勝まで勝ち残っています。

 つまり「藤井聡太九段が誕生するとしたら最短でいつか?」の答えは、ほとんど変わっておらず、来年の春あたりということになります。 

藤井聡太全局集 平成28・29年度版

藤井聡太全局集 平成28・29年度版

 
頂へ 藤井聡太を生んだもの

頂へ 藤井聡太を生んだもの

 
藤井聡太語録 言葉から紐解く若き天才の思考術 (DIA Collection)

藤井聡太語録 言葉から紐解く若き天才の思考術 (DIA Collection)

 
藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)

藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)

 

証言 藤井聡太

 毎月何らかの藤井聡太本が発売されているような感じですが、来月にはこんな本が出るようです。

証言 藤井聡太

証言 藤井聡太

 

2017年度の将棋大賞の記録4部門を独占した棋士・藤井聡太。デビューからわずか1年でトップグループにまで駆け上がった時代を背負うスターの出現は将棋界をどう変えたのか。師匠、プロ棋士、取材関係者らが見た天才棋士の「驚異の思考力」をエピソードとともに検証する。AIによる分析、過去の名棋士との比較、また話題となった「勝負めし」も収録。

  あちこちから藤井聡太本が出ているので、これでしか読めない! というような内容にするのはかなり大変かと思うのですが、はたしてこの『証言 藤井聡太』は、そういう本になるでしょうか。ひとまずは続報待ちです。

初心者にもオススメ! 一年一度のお楽しみ『新手年鑑』

 毎年5月、『将棋世界』の別冊付録に『新手年鑑』というものがつきます。

新手年鑑2018年版(将棋世界2018年6月号付録)

新手年鑑2018年版(将棋世界2018年6月号付録)

 

  その1年、公式戦で出現した新手をまとめたという内容です。編者は将棋界のプロフェッサーとして知られる勝又清和六段。

 私はこのシリーズをいつも楽しみにしているのですが、駒の動きを覚えたばかりの初心者にもオススメできます。何と言っても一手のみの紹介なので、わかりやすいのです。しかもその多くが、勝利を引き寄せるような素晴らしい手なわけですから。

「将棋とは、素晴らしい手を指せばいいものなんだ」

 と語ったのは加藤一二三九段ですが、新手年鑑は素晴らしいだけでなく新しい手の宝庫。誰が読んでも驚きと新鮮さを味わえます。AmazonのKindleではこの別冊付録だけを購入できるのですが、いかがでしょうか? 去年と一昨年に出たものもあります。

新手年鑑2015(将棋世界2016年6月号付録)

新手年鑑2015(将棋世界2016年6月号付録)

 
新手年鑑2017年版(将棋世界2017年6月号付録)

新手年鑑2017年版(将棋世界2017年6月号付録)

 

読む将必見、駒落ち定跡のバイブル『将棋大観』が復刻!

 戦前から戦中にかけて無敵を誇り、将棋界の中心であり続けた木村義雄十四世名人
 この人の業績はたくさんありますが、その中のひとつに定跡の整備があります。当時は満足な定跡書がなかったと述懐する木村名人は、アマチュアが楽しんで学べるようにと、この難題に取り組みました。その集大成とも言えるのが昭和3年に刊行された『将棋大観』で、大ベストセラーとなりました。
 昭和51年には平手定跡を抜いた駒落ち定跡に絞った内容で再出版され、再びロングセラーに。私はこれをAmazonのマーケットプレイスで購入したのですが、奥付を見ると「平成8年 第25刷」とあります。これほど長く売れ続けた棋書は、他にどれほどあるか。

 さすがに現在は絶版になっていたわけですが、このたびマイナビ出版から「プレミアムブックス」として復刊することになりました。

 木村名人は卓越した著述家でもありました。『将棋大観』は駒落ち定跡を学ぶのに役立つのはもちろんですが、その古めかしい名文を鑑賞するのにも最適です。たとえば六枚落ちの項目では……。

 六枚落は、下手方として、上手の駒が只金銀四枚だけであるから、極めて容易に極めて簡単に破り得ると思って、侮って指しては、失敗を招くのである。飛車や角の如き大駒を成る為に、無暗と駒を捨てる人があるが、それは決して良策ではない。
(中略)
 真理は一つであるから、この六枚落の定跡手筋は、将棋全体すなわち平手から五枚落までに必ず応用できるのであるという信念を以て、一つの手筋を十分に会得することは、どれだけ多くの知識を得ることになるか、測り知れないのである。
 この点はっきり記憶して、研究せられれば、六枚落の手筋にも、なる程と思われることがたしかに感ぜられると信じる。

 全編にわたってこのような調子で、今の定跡書にはない昭和の香りが漂います。
 最近は「読む将」と呼ばれる将棋ファンが増えています。自戦記や観戦記、ネット中継の棋譜コメントなどが、将棋文学というべきものだと幅広い層に認知されはじめているのです。その読む将にとって、『将棋大観』は間違いなく垂涎の的となるでしょう。

将棋大観 (プレミアムブックス版)

将棋大観 (プレミアムブックス版)

 

香川愛生女流三段、今度はメイド姿を披露する

 先日、将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』のコスプレを披露した香川愛生女流三段。

araishogi.hatenablog.com

 当ブログでも取り上げて「またぜひ新作を!」などと書いていたのですが、本当に新作を発表してくれました。

 初めて知ったのですが、先日5月10日はメイドの日だったそうで、それに合わせてのメイドコスプレ。いやはや素晴らしい。そしてこんな写真も発掘されたり……。

 

 ところで将棋界とメイドは無縁ではなく、かつては「ご主人様、王手です」という企画があのBIGLOBEで配信されていました。私もリアルタイムでは知らないのですが、詳しくはニコニコ大百科の記事をご覧ください。

dic.nicovideo.jp

 このとおりプロ棋士も参加した企画なのですが、今もう一度やったら、結構受けるんじゃないでしょうか(笑)。