Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

読む将必見、駒落ち定跡のバイブル『将棋大観』が復刻!

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 戦前から戦中にかけて無敵を誇り、将棋界の中心であり続けた木村義雄十四世名人
 この人の業績はたくさんありますが、その中のひとつに定跡の整備があります。当時は満足な定跡書がなかったと述懐する木村名人は、アマチュアが楽しんで学べるようにと、この難題に取り組みました。その集大成とも言えるのが昭和3年に刊行された『将棋大観』で、大ベストセラーとなりました。
 昭和51年には平手定跡を抜いた駒落ち定跡に絞った内容で再出版され、再びロングセラーに。私はこれをAmazonのマーケットプレイスで購入したのですが、奥付を見ると「平成8年 第25刷」とあります。これほど長く売れ続けた棋書は、他にどれほどあるか。

 さすがに現在は絶版になっていたわけですが、このたびマイナビ出版から「プレミアムブックス」として復刊することになりました。

 木村名人は卓越した著述家でもありました。『将棋大観』は駒落ち定跡を学ぶのに役立つのはもちろんですが、その古めかしい名文を鑑賞するのにも最適です。たとえば六枚落ちの項目では……。

 六枚落は、下手方として、上手の駒が只金銀四枚だけであるから、極めて容易に極めて簡単に破り得ると思って、侮って指しては、失敗を招くのである。飛車や角の如き大駒を成る為に、無暗と駒を捨てる人があるが、それは決して良策ではない。
(中略)
 真理は一つであるから、この六枚落の定跡手筋は、将棋全体すなわち平手から五枚落までに必ず応用できるのであるという信念を以て、一つの手筋を十分に会得することは、どれだけ多くの知識を得ることになるか、測り知れないのである。
 この点はっきり記憶して、研究せられれば、六枚落の手筋にも、なる程と思われることがたしかに感ぜられると信じる。

 全編にわたってこのような調子で、今の定跡書にはない昭和の香りが漂います。
 最近は「読む将」と呼ばれる将棋ファンが増えています。自戦記や観戦記、ネット中継の棋譜コメントなどが、将棋文学というべきものだと幅広い層に認知されはじめているのです。その読む将にとって、『将棋大観』は間違いなく垂涎の的となるでしょう。

将棋大観 (プレミアムブックス版)

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