これぞ加藤流! 角換わり拒否△4四歩戦法
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今日明日と、第31期竜王戦七番勝負の第2局が行われています。羽生善治竜王が突き放すか、広瀬章人挑戦者が1勝1敗のタイに戻すか、要注目です。
【第31期竜王戦 七番勝負】
— ニコ生公式_将棋 (@nico2shogi) 2018年10月23日
本日9時より、羽生善治竜王(後手) vs.広瀬章人八段(先手)の第2局初日を生放送中です。
解説開始は9時から、加藤一二三九段(解説)、高浜愛子女流2級(聞き手)です。
▼視聴https://t.co/20CgwR3Xmj pic.twitter.com/lRur39trxI
さて、1日目はニコニコ生放送の解説に加藤一二三九段が登場しました。いつものように最初からハイペースのトークで、視聴者も盛り上がっていました。
そのトークの中で、加藤九段は今回の戦型である角換わりについて言及、いろいろと持論を展開されました。実は加藤九段、角換わり腰掛け銀も結構好きとのこと。ただしそれも先手番の場合で、後手番の場合は加藤流とも呼べる戦法を現役時代に多用していました。「加藤一二三名局集」のインタビューの中でこう発言しています。
「棒銀、矢倉はもちろん好きですが、角換わり腰掛け銀も実は結構好きです。銀を5六に腰掛けた感じが鋭角的でいいです。ただ、腰掛け銀の後手番は少しきついと思っているのと、後手番で△4四歩と角道を止めて、先手に飛車先の交換を許す形を得意にしているので、あまり腰掛け銀は採用していません。
角換わり腰掛け銀の後手番が有力で勝っているなら、私も採用しますが、今は明らかに後手の勝率が悪いですよね。それなら加藤流の△4四歩を皆さんも少し研究したらどうかと思いますよ(笑)*1
ここから▲2五歩、△4二銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△4三銀が一例。
インタビューは2015年なので、もちろん今とは状況が違います。2017年に千田翔太六段が「角換わり腰掛け銀4二玉・6二金・8一飛型」で升田幸三賞を受賞し、矢倉から角換わり党にシフトしたという藤井聡太七段が、後手番を持ってだいぶ勝っています。後手でも互角以上にやれるというのが今の角換わりです。
しかし加藤九段の思想は、飛車先を切らせてもかまわない、その代わりに金銀をすばやく繰り出していく――という近年のコンピュータ将棋が広めた考え方にも通じるものがあります。以前に書いた右四間飛車の記事でも触れたのですが、加藤将棋は今から見ると時代の先を行っていたと思える面もあるわけですね。
ところで加藤流の角換わり拒否戦法、2012年の達人戦、対森内俊之九段戦の棋譜を今も見ることができます。
2012年7月20日 準決勝 森内俊之名人 対 加藤一二三九段|第20回富士通杯達人戦
この戦い、将棋ファンには結構知られているのですが、ある意味加藤九段の棋歴の中でも特異な一局になりました。その意味は……ご存じなかった方は、ぜひ最後までご覧ください。
*1:加藤一二三名局集 P19