藤井聡太四段が一気に六段に昇段する可能性!
2018年に入ってからも、藤井聡太四段は好調です。6日の大橋貴洸四段戦こそ落としましたが、以降は三連勝。とりわけ先日の朝日杯、佐藤天彦名人に勝利したことは大々的なニュースになりました。
もし藤井四段がこの朝日杯で優勝を決めると、昇段規定にある「全棋士参加棋戦優勝」により、五段に昇段します。実現すれば、一般棋戦優勝の最年少記録となります(現在の記録は加藤一二三九段の15歳10ヶ月)。
デビューから一年ちょっとで五段昇段というのは、そうそうないペースです。ところが五段どころか一気に六段に昇段する可能性もあるようです。
藤井四段は現在、名人位に通じる棋戦である順位戦のC級2組において、7戦全勝をキープしており昇級レースのトップに立っています。そして五段への昇段規定には「順位戦C級1組昇級」もあります。
どういうことかというと「順位戦C級1組昇級」を決めて五段になり、朝日杯で優勝すれば「五段昇段後全棋士参加棋戦優勝」により六段への昇段が決まるわけです。
朝日杯の決勝は2月17日で、それまでに順位戦C級2組で昇級を決められるかがカギです。藤井四段と同じく全勝をキープしているのは今泉健司四段ひとりだけですが、順位の関係で藤井四段のほうが昇級に近いのです。藤井四段は19日に8戦目があります。ここで勝つのは、ほぼ絶対条件です。
そしてC級2組の9戦目は2月1日と9日に組まれています。藤井四段が勝ち、さらに1敗勢が軒並み星を落とすようなことがあれば、最終10戦目を待たずに昇級が決まるという計算です。詳しくはリーグ表をご覧ください。
藤井四段にとっては相当に都合のいい展開ですが、いかにもそういう幸運を引き寄せそうなスター性は、もはや疑いないところ。1ヶ月のうちに一気に六段となれば、またひとつ藤井伝説が加わりそうです。
『りゅうおうのおしごと!』第7巻は現代ライトノベルの新手筋
アニメ化が始まったことで、ますます売上を伸ばしている将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』。先日、最新刊の第7巻が発売されました。さっそく好評価が集まっているようです。
私もAmazonから届いたその日のうちに読み終えましたが、第1巻からずっと右肩上がりで盛り上がるっていうのは、数多あるライトノベルの中でも珍しいのではないでしょうか。白鳥士郎さんの卓越した実力と、将棋というテーマが内包するこの上ない熱さを示すものです。
さて、第7巻はこれまでの中でもひときわ挑戦的でした。
メインキャラクターとなったのは、主人公・九頭竜八一の師匠である清滝鋼介九段です。八一たちを影ながら見守る大人、基本的にはそんな立ち位置ですが、第1巻冒頭の「オシッコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」をはじめ、コメディ要員としての存在感も強いキャラクターです。そんな彼がフィーチャーされるとは、まさか思いもよらないというもので。
そして描かれるのは、もはや全盛期を過ぎて下り坂を転げ落ちる運命の、悲しい中年棋士の姿でした。圧倒的優勢から一手頓死し、子供のように盤の前で泣きじゃくる。このシーンのいたたまれなさは、シリーズ屈指でしょう。A級に在籍し名人にも挑戦したことがあるという「実績」すら何の役にも立たず、まだプロですらない奨励会員にも辛辣にあしらわれる始末。
その後はいろいろあって奮起するのですが、とにかく50を過ぎたオッサンがこれでもかと見せ場を作ります。ファンタジー作品等では、歴戦の古強者が若者のために道を開く、それに若者が感銘を受ける――といった展開はしばしば見られるでしょう。しかし『りゅうおうのおしごと!』のような現代ライトノベルで、こんなストーリーが見られるとは。それも清滝の場合、第一に自分のため、自分がひたすら勝ちたいからなんですね。弟子や娘に恥ずかしくない姿を見せるというのは二の次。ひたすらに、ガムシャラに、泥臭く戦う。ただ勝ちたいから。老若男女の区別なく戦える将棋という競技だからこそ、このようなストーリーを紡ぐことができたわけです。
これほどまでにオッサンをカッコいいと思えるライトノベルは、そうそうないはずです。アニメがきっかけで原作を読みはじめた人たちは、早くこの最新刊まで辿り着きましょう!
絶対王者に急戦で挑む! 八代弥六段-羽生善治竜王戦を振り返る
この週末にいよいよ開幕した、第11回朝日杯将棋オープン戦の本戦。今日は佐藤名人に藤井四段が勝利したことが話題となりましたが、それと同等以上に盛り上がったのが、昨日の八代弥六段vs羽生善治竜王戦です。
羽生竜王はこれまでに5回の優勝を誇り、実績では圧倒的に上回りますが、八代六段こそは前年度の朝日杯覇者。若手の中でも随一の実力者と言えるでしょう。
さて、後手となった羽生竜王がどんな戦型を選ぶかが注目されましたが、なんと角道を止めてのノーマル四間飛車! 羽生竜王は基本的に居飛車党ですが、何でも指せるオールラウンダー。その前の高見五段戦でも四間飛車(藤井システム)を採用していました。今度もやってくれるかも……と期待した振り飛車党は多かったですが、そのとおりになりました。
そして、さらに驚きだったのが八代六段の選んだ戦型でした。
鷺宮定跡! まさかの急戦でした。
先日、鷺宮定跡で阿久津八段に勝利した青野九段の対局を取り上げましたが、八代六段は青野九段門下です。プロの将棋界において、師匠は弟子を直接教えることは少ないと言われますが、青野九段は珍しく直々に教えるタイプだそうです。
八代六段もおそらく、鷺宮定跡について手ほどきを受けたことがあるのでしょう。何より相手は最強の羽生竜王、生半可な準備や思いつきでこの戦型を選ぶわけはありません。今やほとんど採用例がありませんが、普段からひそかに研究していたのだと思います。とにかく対振り飛車急戦派としては、とてもワクワクする展開でした。
対局はまさに大熱戦でした。終始八代六段が優勢に進めており、解説の木村九段が「どう見ても、八代六段が勝ちという局面が複数回ありました」と語るほどでした。しかし羽生竜王の頑強な粘りの前に、形勢は二転三転。最後には絶対王者の前に膝を屈する形になりました。
惜しくも敗れたとはいえ、近年ほとんど見られない対振り飛車急戦の、間違いなく名局でした。急戦はいまだ死なず。その思いを新たにさせてくれた八代六段の健闘を、心から称えたいと思います。
将棋ファンから見たアニメ『りゅうおうのおしごと!』のスゴいこだわり
ついにスタートしたアニメ『りゅうおうのおしごと!』。割合から言えば、将棋ファンよりも将棋を知らないアニメ好きやラノベ好きのほうが、ずっと多いでしょう。このアニメを機に、ますます将棋好きになる人が増えてほしいと思っています。見逃してしまった人はAbemaTVで見逃し放送があるので、ぜひご覧ください。
本作の面白さのひとつが、実際に将棋界で起こったエピソードを巧みに取り入れていることです。この手のパロディは原作者・白鳥士郎さんの十八番なのですが、少なくとも今回の第1話においてはそれらは見られませんでした。原作にあったあれやこれを大胆にカットして、より万人向けに仕上がっているという印象です。この構成は次回以降も続くのでしょうか?
ともあれ、非常に素晴らしいアニメ化がされていると感じました。特に将棋ファンにとっても、よくぞここまで! と絶賛したくなる描写と演出が随所に見られたのです。
リアルな将棋盤と駒
押し入れから将棋盤を取り出し、雛鶴あいちゃんの前に置く。
「り、立派なしょーぎばんです……!」
「大事に扱ってね。ローン残ってるから」
駒も合わせると新車が買えるくらいのお値段がするんだ。(第1巻 P44)
原作から引用しましたが、あいの体が半分隠れてしまうほどの高さがある七寸盤。そして駒が虎縞模様になっているのにお気づきでしょうか。これは虎斑と呼ばれ、将棋駒の中でも最上の高級品のひとつです。押し入れには他の盤も見られましたが、主人公の八一は竜王となったことで高額の賞金を獲得したので、これほどの盤駒を買えたのでしょう。
盤の微妙な木目といい、虎斑といい、盤駒をここまでリアルに描いたアニメは初めてではないでしょうか(3月のライオンはどうだったか……ちょっと確認します)。
リアルな駒音
試験対局のシーンで、まず八一が駒袋から駒を出し、盤の上に広げます。これが非常にリアルでした。実際の音、そのままです。
駒袋から駒を取り出す音なんて、普通ならほとんど聞く機会はないでしょうが、気になった方は毎週日曜日の朝に放送されるNHK杯将棋トーナメントをご覧になってください。対局者が駒を取り出すときの音、まさにこれです。
あいの駒の並べ方
並べ方の作法も知らないようで、とにかく急いで並べていく。緊張のためか駒を綺麗にマス目の中に入れるのすら苦労してるようだ。(第1巻 P46)
対局が開始したシーン。八一の陣とあいの陣を見比べてみてください。八一の駒がきっちりと揃っているのに対し、あいの駒は微妙にずれたりしてます。まさに将棋を覚えて三ヶ月くらいの子供であることをリアルに描写しているのです。
駒の置き方
エンディング(次回以降のオープニング)の最初で、あいが駒を横から滑らせるようにマス目に置く描写があります。これ、プロでもよくあるんです。単純に上からパチンとやるより、なんだか技巧的(?)に見えます。
これほどまでにこだわって作られているのは、将棋ファンとして非常に嬉しい。可愛らしい作画と声優の演技も文句なし。ネットの反応を見るとおおむね好評ですし、この調子で多くのアニメファンを獲得してほしいですね。
りゅうおうのおしごと! 7 ドラマCD付き限定特装版 (GA文庫)
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こんなにあった! お子さん向けの将棋
空前の将棋ブームが続いている昨今、小さいお子さんに将棋をやらせてみたいという親御さんも多いかと思います。しかしいきなり本将棋は難しそう……そんなニーズに合わせて、主に子供向けの将棋セットがいろいろと販売されています。どういうものがあるのか、まとめてみました。
NEW スタディ将棋
藤井四段も最初はこれで覚えたということで、一躍売上を伸ばしています。駒には漢字と進み方がセットで表記されており、初心者向け将棋セットのスタンダードを確立しました。
どうぶつしょうぎ
ルール考案は北尾まどか女流二段、デザインは元女流棋士の藤田麻衣子さん。盤面が3×4というのが最大の特徴です。その可愛らしさとシンプルさが、子供だけでなく大人の女性にも大人気となっています。
9マス将棋
どうぶつしょうぎよりも、さらに盤面を簡略化。考案は青野照市九段です。いろいろな初期配置から遊ぶことができます。
ドラえもん はじめての将棋&九路囲碁 ゲーム20
キャラクターとコラボした商品はボードゲームの定番。さまざまな将棋、そして囲碁ゲームを遊ぶことができます。
アンパンマン はじめてしょうぎ
こちらはアンパンマン。どうぶつしょうぎと近いタイプで、北尾女流が共同開発として関わっています。
わんにゃん将棋
盤面は9×9の本格派。犬と猫が好きな子供にピッタリそうです。「山くずし」「はさみ将棋」「まわり将棋」「将棋クイズ」などのミニゲームもついています。
今後もいろいろと、バラエティ豊かな製品が発売されると思います。これは我が家に合ってそうだなという将棋を、ぜひ見つけてみてください。
三枚堂達也六段、なんと棒銀で四間飛車撃破!
1月4日、群馬県高崎市の「ヤマダ電機LABI1高崎」において、上州将棋祭りが開催されました。今年で第8回を迎える新春恒例の将棋イベントです。
このイベントではプロ棋士の席上対局が行われますが、そのひとつ三枚堂達也六段-戸辺誠七段戦で驚愕の展開が繰り広げられたのです。
四間飛車に棒銀!
加藤一二三九段が引退した今、この局面がプロの対局でまた見られるとは思いもしていませんでした。しかし解説の藤井猛九段は「いまだに結論が出ていない。謎です。いい勝負なんです」と語っています。決して棒銀がダメと決まったわけではないのですね。
そしてこの対局の結果は、三枚堂六段の勝利でした。
昨日お越しいただいた皆様、ありがとうございました。
— 東竜門〜関東若手棋士〜 (@wakate_shogi) 2018年1月5日
席上対局では加藤先生の無敵棒銀を採用し新年初勝利をあげることができました。
イベント後に加藤先生にそれをご報告すると大変喜ばれていてそれが嬉しかったです。
今年は棒銀のように一歩ずつ前進できる一年にしたいと思います!
(三枚堂)
加藤九段が喜んだというその光景が、ありありと浮かんでくるようです。もちろん対振り飛車の急戦派としても、これほど嬉しいことはありませんでした。素晴らしい熱戦だったので、ぜひ将棋連盟モバイルで見ていただきたいです。欲を言えば、ぜひ公式戦でも採用を!
増田康宏四段の雁木講座がはじまる!
囲碁・将棋チャンネルでは3ヶ月おきに新しい将棋講座がスタートしますが、ついにあの戦法の講座が!
【最新講座】本日21:40~放送!増田康宏の将棋講座 「ザ・雁木」(全26回)新人王戦2連覇の若手トップ棋士・増田康宏四段による新講座。評価が見直され、再びプロの間で流行っている雁木囲いの魅力を解説!初回:毎週木・土21:40~/再放送:毎週火・木9:40~、日15:40~#将棋 #shogi #囲碁将棋チャンネル
— 将棋@囲碁・将棋チャンネル (@shogi_net) 2018年1月4日
それまで有効な戦法とは見なされていなかった雁木戦法ですが、今や多くの棋士が採用しています。その火付け役である増田四段が、まさに満を持してという感じで講座をスタートします。
その名も【増田康宏の「ザ・雁木」】。
もちろん増田四段にとっては初めての講座で、初々しい解説が見られそう。初回放映は本日21:40から(再放送あり)。雁木戦法を覚えたい人にとって、必見の内容となりそうです。
定跡次の一手「攻めて楽しい雁木戦法」(将棋世界2017年11月号付録)
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- 発売日: 2017/10/05
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うな重を卒業していた加藤一二三九段
私は加藤九段のファンで、加藤九段が出演しているテレビ番組はだいたい視聴しているのですが、昨年末にBS日テレで「ひふみんの『こんなの初めて』連発旅」というバラエティーが放映されました。年始休み、まとまった時間ができたのでやっと視聴することができました。
すっかり人気タレントになって多忙の加藤九段を、癒やしの旅でもてなす……という内容で、終始ほっこりさせられました。しかしそんな中で、おっとなる発言が飛び出ました。
加藤九段(以下加藤)「たとえばよく知られていますけれども、対局中の食事ね、うな重。40年間、うな重を食べ続けたんですよ対局中は」
TKO木下(以下木下)「対局中は絶対うな重」
加藤「それで、もう今は現役を引退したので、うな重も卒業しました」
木下「ずっと食べたから、いらないんですね」
加藤「昼も夜もうな重だったの。40年ですよ。さすがにもう、ちょっとね(笑)。でもうな重を卒業してると言ってますけれど、黙ってるとイベントで、主宰者側が必ずうなぎを出してくるんです」
木下「そりゃそうですよ。好きやと思いますもん、40年食べてるから。どう思うんですか?」
加藤「率直に言って、主宰者側のご厚意はありがたいんだけれど、ちょっと、はっきり言って、困ります(笑)」
現役晩年になると健康上の問題もあって、うな重以外の注文も目立っていましたが、加藤九段といえばやはりうな重(ふじもと)です。それがもう卒業していたとは、ちょっとビックリしました。
しかし引退されて公式戦を指すことがなくなれば、あえてうな重を食べることもないですよね。家庭で普段食べるようなものでもないですし。
今後もタイトル戦の解説でニコ生出演されることもあるかと思いますが、昼食にうな重というのは、もう見られないかもしれません。
コミックマーケットに藤井聡太四段が?
あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
さて、新年一発目なので、ちょっと愉快な話題を。
藤井四段もコミケを楽しんでましたね(^^)
— ともぷん・幸村WEAREREDS (@Yukihisa966) 2017年12月31日
そしてみろく庵のおじちゃん、ビッグサイトまで出前お疲れ様です(笑)
って取材陣までいるとは最高やな(笑)
藤井四段 きのさん @kinox2d
みろく庵出前のおじちゃん 夏菜さん @o_kana614
掲載許可済みです
撮影ありがとうございました pic.twitter.com/OBOj1dc0Sg
そして、コミケ三日目の速報!
— 紫燕彩香@冬コミはずっと山の翁 (@Sien_Ayaka) 2017年12月31日
『藤井四段と将棋を打つ翁』
流石コミケ!こういうのどんどんやりたい!
藤井四段:きのさん
撮影:夏菜さん
山の翁:紫燕彩香#C93 #C93コスプレ pic.twitter.com/aQ4NLciKuA
コミックマーケットは同人誌即売会ですが、コスプレイヤーの活動の場としても知られています。それにしてもコミケで将棋棋士のコスプレというのは、2017年の将棋界がいかに一般社会で話題になったかの証左かと思います。2018年もこの勢いを維持して盛り上がっていただきたいものですね。
将棋ライトノベル『俺の棒銀と女王の穴熊』年末年始の特別セール!
私が個人出版している将棋ライトノベル『俺の棒銀と女王の穴熊』ですが、このたび年末年始の特別セールを行っています。Kindle版が通常250円のところ、全巻99円の最安値になっています。
2017年はかつてないほど将棋界が盛り上がった年でした。そのことに対する感謝の気持ちを込めて、という意味があります。興味はあったけどもうちょっと安ければ……と思っていた方は、この機会にぜひ手に取ってみてください。
この『俺の棒銀と女王の穴熊』はあくまで個人出版で、同人小説、インディー小説に分類されるものですが、商業ベースの将棋小説も近々発表される予定です。続報をお待ちいただければ幸いです。