Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

加藤一二三「十段」は実現するか?

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 加藤一二三九段は名人をはじめ多くのタイトルを獲得していますが、名棋士としての道を歩み始めた最初が、先日も取り上げた十段戦です。

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 十段は加藤九段にとって、名人の次に思い入れの強いタイトルでしょう。十段戦は1988年、竜王戦として発展解消しました。現在ではこれを名乗る棋士はいないわけですが、わかりやすい肩書きですよね。何と言っても九段より一段上です。ちなみに囲碁では今も十段戦があります。

 十段はあくまでタイトル名、称号であり段位ではないのですが、正式な段位として新設するべきではないかという声が、当の加藤九段から提案されたことがあります。田丸昇九段のコラムに、その経緯が書かれています。

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私は、日本将棋連盟は加藤の引退を契機として、前記の棋士たちも対象にした十段を段位にする新制度を検討してほしいと思っている。正直なところ、公式戦でろくな実績がなかった私が加藤と同じ九段というのは気恥ずかしい。

 とのことですが、失礼ながら私も同感です。九段もピンからキリまでいて、加藤九段のように超一流の実績を残した人もいれば、タイトル獲得歴のない人もいます。俗に「段位のインフレ」と呼ばれ、アマチュア間でも古くから議論されていることですが、プロである田丸九段からこのようなコメントが出されるのは、非常に有意義であると思います。

 この件については、他にも賛成している棋士がいます。郷田真隆九段です。

またこれは個人的な意見ですが、加藤先生はタイトル獲得8期、NHK杯7回を含む棋戦優勝23回、九段になってから800勝近くしておられます。加藤先生の初タイトルは十段でしたし、名誉十段を差し上げるべきではないかと思っています。*1

 十段と名誉十段、微妙な違いはありますが、要は加藤九段には九段よりもっとふさわしい肩書きがあるということです。同じ気持ちの棋士は、結構多いはずです。

「個人的なことではなく、通算勝利が1000勝に達した内藤國雄九段や有吉道夫九段のような棋士のためにも」と加藤九段が断っているように、これは加藤九段だけの問題ではありません。他にも十段にふさわしい棋士はいます。今すぐにというのは難しいかもしれませんが、将棋連盟上層部の皆様におかれましては、ぜひとも前向きに検討していただきたいものです。

将棋世界 2017年4月号

将棋世界 2017年4月号

 

*1:将棋世界2017年9月号 P77