Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

ブーム終了とか言われてるけど藤井四段って最近どうなの?

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 あの29連勝からしばらく経ちました。もう藤井四段ブーム終了wなどと、世間の移ろいやすさを嗤う声が一部で見られますが……。

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 こうした「藤井四段に続け!」的な記事は今もちょくちょく見られるわけで、確かに一頃の熱狂は収まりましたが、彼の巻き起こしたブームは着実に将棋少年&少女を増やしています。子供たちにとって、藤井四段は永遠のヒーローになるでしょう。
 そもそも将棋ファンからすると、自分の趣味が大きく取り上げられて嬉しいという気持ちはありましたが、それ以上にちょっと騒がれすぎだったというのが正直なところです。一番ホッとしているのは藤井四段本人でしょう。

 さて本題ですが、藤井四段って近頃どんな感じなの? と気になる方も多いと思うのでまとめてみました。

真の実力が見えてきた? 厳しい評価も

 自分の実力からすれば29連勝できたことは幸運だった――藤井四段があちこちで語っていることですが、これは謙遜ではなく事実であろうということがわかってきました。

 8月4日、藤井四段は王将戦の一次予選で菅井竜也七段と対局し、敗れています。この菅井七段、今期の勝率は7割越え、通算成績でも300戦以上して7割越えと、間違いなく現在のトップクラスに数えられる棋士です。そして先日、羽生善治三冠から「王位」を奪い、自身初のタイトル獲得を成し遂げました。しかも4勝1敗という圧倒的な成績でした(羽生さんが二冠に後退したのが5年ぶりというのが、またとんでもないですが……)。

 8月24日には、棋王戦挑戦者決定トーナメントで豊島将之八段と対局し、これも敗れています。豊島八段は今期の勝率8割越え! 通算成績も500戦以上して7割越え! やはりトップクラスの棋士に数えられています。そして名人挑戦権を争うA級順位戦では土つかずの3連勝。名人挑戦者の最有力候補となっています。
 このときの対局で、解説の棋士がこう評していました。

「今日の将棋を見ると、トップクラスの棋士とは少し実力差があるような印象」

 そのトップクラスの棋士に勝ちまくったのが今春に行われた非公式戦の「炎の七番勝負」でしたが、これは対局相手たちがデビュー間もない藤井四段をよく研究できていなかったこと、対局時間が短いこと(1時間。最終戦の羽生三冠戦のみ2時間)などが要因として挙げられます。
 今はだんだんと藤井四段のデータが集まり、ある程度狙いを絞って事前研究ができます。そして持ち時間の長い対局ならばじっくり考えられ、そうそう後れは取らないということです。

それでも大記録を充分狙える

 9月1日現在、藤井四段の通算成績は38勝4敗。
 連勝が途切れて以来、負ける姿がもう珍しくはなくなってきたとはいえ、いまだ勝率9割を超えています。将棋ファンがもっとも期待しているのが、年度勝率記録の更新です。これは中原誠十六世名人が1967年度に記録した0.855(47勝8敗)が最高。ちょうど50年ぶりに更新できる可能性は、充分にあるでしょう。

関連書籍が絶好調

 怒濤の連勝で世間を賑わせていた頃に企画スタートしたであろう書籍が、8月に続々と発行されました。

天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃

天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃

 
藤井聡太 名人をこす少年

藤井聡太 名人をこす少年

 
藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)

藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)

 

 Amazonのレビューはいずれも好評価。あまり将棋は詳しくないけど藤井四段のことを知りたいという人は『名人をこす少年』がよさそうですね。このあどけない子供の写真は、書店でも相当目立つでしょう。

テレビ、動画サイトでは今も破格の扱い

 連勝が途切れてからも、テレビと動画サイトでは藤井四段の対局がしょっちゅう生中継されています。ニコニコ動画でおなじみドワンゴ主催の叡王戦は予選から中継されていますが、従来将棋の生中継はタイトル戦や挑戦者決定戦くらいのもので、いかに藤井四段の対局が「客を呼べるコンテンツ」と見なされているかがわかるでしょう。
 明日9月2日にはCSの囲碁・将棋チャンネル他で若手棋士たちの棋戦・加古川青流戦が、そして9月3日にはNHK杯テレビ将棋トーナメントの対森内俊之九段戦が生中継されます。
 特に後者は、将棋ファンに驚愕をもって迎えられました。NHK杯は通常事前収録ですが、生放送されたことは過去一度しかありません。森内九段は羽生二冠の少年時代からのライバルとして知られ、名人位通算8期の大棋士。これまでの中でも最強の相手のひとりと言っていいでしょう。大熱戦が期待されます。

 

 

 というわけで、ブーム終了していようがいまいが、藤井四段はまだまだ将棋ファンを楽しませてくれそうです。とにかく3日のNHK杯生放送、これはぜひ見てみましょう。私は仕事で外に行かなきゃいけないんですがね!