Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

またまた新女流棋士誕生! 脇田菜々子女流2級

 先日、LPSAの礒谷真帆新女流2級について記事にしました。

礒谷真帆新女流2級誕生! LPSA所属としては3人目の新人

 するとその翌日には、将棋連盟でも新女流棋士が誕生することがニュースになりました。

 脇田菜々子女流2級。豊島将之二冠と同じ愛知県一宮市の出身です。東海研修会でB2クラスまで昇級し、今年度から改訂された新規定によって女流2級デビューすることになりました。
 夏に行われたマイナビ女子オープン一斉予選では、本田小百合女流三段と加藤圭女流2級に勝っています。このことからもすでに十分な実力の持ち主と言えるでしょう。
 脇田さんはTwitterアカウントを開設しており、さっそく応援の声が届いています。

 それにしても有力な女流棋士がこの数年でグンと増えました。実力による競争はますます加速していきそうです。

女性のための将棋の基本―誰でも簡単に始められる入門編

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礒谷真帆新女流2級誕生! LPSA所属としては3人目の新人

 本日、喜ばしいニュースが飛び込んできました。

 LPSAの大庭美夏女流初段を母に持つ礒谷真帆さんが、同じLPSAの新女流2級になるというニュースです。渡部愛女流王位、堀綾乃女流2級に続く、3人目のLPSAの新人です。
 礒谷さんは今期のマイナビ女子オープン本戦でベスト8に進出しており、この実績により女流棋士申請資格を得ました。タイトル戦に挑戦したこともある中村真梨花女流三段に勝ってのベスト8ですから、もはや新人離れした実力の持ち主と言えます。その棋譜がPCでも見られますが、本当に強いです。

2018年10月3日 第12期マイナビ女子オープン 本戦 中村真梨花女流三段 対 礒谷真帆アマ

 ともあれ女流棋界にとって、何より所属棋士の数が少ないLPSAにとって、この上ない朗報です。実力向上の著しい女流の世界ですが、きっと活躍してくれるでしょう。いきなりタイトル挑戦――ということだって、もしかしたらありうるかもしれません。

将棋漫画を徹底的に語り尽くす! 『将棋マンガナイト』

 Twitterを眺めていると、ものすごく気になる情報が飛び込んできました。

 コミック研究家の稀見理都(棋見理と)さんが主催する『将棋マンガナイト』。

今、将棋と共に将棋マンガも熱い!
同時に10作品が共存する将棋マンガ戦国時代。
そんな魅力ある将棋マンガについて徹底的に語り合う!!

 

【ゲスト】
香川愛生(女流棋士)
左藤真通(コミックバンチ「将棋指す獣」原作者)
小杉あや(元祖観る将、「急戦法まことスペシャル」の作者)
田中誠(指導棋士三段)

 という、将棋漫画好きにとってはたまらないトークイベントです。
 私は本格的に将棋ファンになってから10年足らずですが、将棋漫画をどれほど読んできたかというと……それほど自慢できる数ではありません。特に2000年以前の作品となると、『あばれ王将』『5五の龍』くらいですね。ちなみに一番好きな将棋漫画はどれかというと『しおんの王』だったりします。

araishogi.hatenablog.com

araishogi.hatenablog.com


 開催は11月28日(水)、平日の夜ですが、興味のある方はいかがでしょうか? 私も将棋漫画の歴史を勉強するため、足を運ぼうと思います。

急戦法まことスペシャル (ヤングジャンプコミックス)

急戦法まことスペシャル (ヤングジャンプコミックス)

 

大ヒットライトノベル『涼宮ハルヒ』シリーズの新作は……なんと将棋小説?

『涼宮ハルヒの憂鬱』というライトノベル、読んだことはなくとも名前は聞いたことはある、という方も少なくないと思います。

涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)

 

 2003年に刊行され、現在までにシリーズ累計2,000万部を突破している、ここ20年で五指に入るであろうライトノベルシリーズです。アニメ版も大好評を博しました。
 そんなハルヒシリーズですが、近年は新作の刊行が途絶えており、ファンはやきもきさせられていたのですが、このたび「ザ・スニーカー」という雑誌に原作者・谷川流さんの書き下ろし新作が掲載されることになりました。
 そしてトリビュート短編小説として、さがら総さんの『涼宮ハルヒの一手損角換わり』という作品も掲載されるというのです!

30周年特設サイト|スニーカー文庫(ザ・スニーカーWEB)

 さがらさんは2010年に『変態王子と笑わない猫。』でデビュー。アニメ化やコミック化を果たした人気シリーズとなりました。さがらさんは実は生粋の将棋ファンで、この作品も広瀬章人八段のかつての異名「振り穴王子」にあやかって付けられたということです。そして高橋道雄九段が監修を務めた将棋漫画『駒ひびき』の原作も担当しました。

駒ひびき(1) 【電子特別版】 (ドラゴンコミックスエイジ)

駒ひびき(1) 【電子特別版】 (ドラゴンコミックスエイジ)

 

『りゅうおうのおしごと!』の白鳥士郎さんに勝るとも劣らない、ガチの将棋好きライトノベル作家なわけです。そんな方の将棋小説ですから、かなり期待できるものとなるでしょう。

藤井猛九段が竜王位を失冠したときの潔い一言

 第31期竜王戦七番勝負の第2局は、羽生善治竜王の勝利でした。どう見ても細いと思われていた攻めを、まさに綱渡りのような絶妙なテクニックで繋ぎ続けた羽生竜王は、本当に圧巻でした。タイトル通算100期の大記録にさらに近づいて、今後の注目はますます高まる一方でしょう。

 ところで羽生さんといえば例の「三流は人の話を聞かない(以下略)」問題。羽生さんの関連書籍を片っ端から集めているのですが、ついにはこんな本にも手を伸ばしてみました。

第十四期竜王決定七番勝負激闘譜―藤井猛vs羽生善治

第十四期竜王決定七番勝負激闘譜―藤井猛vs羽生善治

 

 2002年に出版された、第14期竜王戦七番勝負の観戦記集です。当時三連覇していた藤井猛竜王に、羽生善治四冠が前期に引き続き挑んだシリーズでした。
 これも広義の意味で羽生さんの本! などと考えたのですが、やっぱり例の発言は載ってはいませんでしたね。まあ最初から期待はしていませんでしたが……。

 さて、こういうちょっと昔の書籍を読んでいると、いろいろと興味深い記述が見つかります。
 藤井竜王は1勝4敗で失冠してしまったのですが、あとがきに書かれた打ち上げの席でのやりとりは、全藤井猛ファンが記憶すべきと感じています。

(中略)
 一方、藤井の表情をとらえた写真家の諸氏は「美しかった」と口をそろえた。「勝負ですから」と語った藤井。打ち上げの席で「三期も務めていただいて、感謝します」と申し上げると、「その言葉がなによりです」。敗れて悪びれず。肩書についても、前竜王ではなく「九段を名乗ります」。即座に答えた。堂々たる身の処し方だった。*1

 余分な説明はいらないというものですね。

藤井猛の攻めの基本戦略 (NHK将棋シリーズ)

藤井猛の攻めの基本戦略 (NHK将棋シリーズ)

 

*1:第十四期竜王決定七番勝負 激闘譜 藤井猛vs羽生善治 P206

銀河戦で快挙の連続! アマ3人が初戦突破

 第27期銀河戦の本戦トーナメント、各ブロック進行しています。

www.igoshogi.net

 銀河戦の特徴のひとつが、4つのアマチュア枠があることです。瀬川晶司五段がアマ時代、この棋戦で勝ちまくったことが、後のプロ編入試験に繋がったのはよく知られているところです。
 さて、今期もアマチュア4人が登場した初戦がすべて放映されましたが、プロ相手に3勝1敗という好成績です。

プロ棋士 アマチュア
神崎健二八段 折田翔吾アマ
伊奈祐介六段 森村賢平アマ
古森悠太四段 菅野倫太郎アマ
斎藤明日斗四段 木村孝太郎アマ

 今やアマがプロを破る光景は珍しくも何ともないのですが、やはり実際に放映という形で見ると、嬉しいものです。
 銀河戦のもうひとつの大きな特徴が、最後まで勝ち残らなくても最多連勝者は決勝トーナメントに進めることです。瀬川五段はアマ時代に出場した第12期のCブロックで、3連勝したことにより決勝トーナメントに進んでいます。これは最多連勝としてはかなり少なめです。よく見るとAブロックでは飯島栄治四段(当時)がたったの2連勝で決勝トーナメント進出してますね。そのくらいでもいい場合がある、というのは一番下から戦っていくアマチュアにとっては好材料でしょう。

 他の棋士の勝敗に左右されることではありますが、今回の3人の中から、3連勝くらいで決勝トーナメントに進む方が出るかもしれません(もちろん最終勝ち残り者となるのが一番の理想ですが)。瀬川五段以来の快挙、見てみたいものです。

泣き虫しょったんの奇跡 Original Soundtracks by Toshiyuki Terui

泣き虫しょったんの奇跡 Original Soundtracks by Toshiyuki Terui

 

これぞ加藤流! 角換わり拒否△4四歩戦法

 今日明日と、第31期竜王戦七番勝負の第2局が行われています。羽生善治竜王が突き放すか、広瀬章人挑戦者が1勝1敗のタイに戻すか、要注目です。

 さて、1日目はニコニコ生放送の解説に加藤一二三九段が登場しました。いつものように最初からハイペースのトークで、視聴者も盛り上がっていました。
 そのトークの中で、加藤九段は今回の戦型である角換わりについて言及、いろいろと持論を展開されました。実は加藤九段、角換わり腰掛け銀も結構好きとのこと。ただしそれも先手番の場合で、後手番の場合は加藤流とも呼べる戦法を現役時代に多用していました。「加藤一二三名局集」のインタビューの中でこう発言しています。

「棒銀、矢倉はもちろん好きですが、角換わり腰掛け銀も実は結構好きです。銀を5六に腰掛けた感じが鋭角的でいいです。ただ、腰掛け銀の後手番は少しきついと思っているのと、後手番で△4四歩と角道を止めて、先手に飛車先の交換を許す形を得意にしているので、あまり腰掛け銀は採用していません。
 角換わり腰掛け銀の後手番が有力で勝っているなら、私も採用しますが、今は明らかに後手の勝率が悪いですよね。それなら加藤流の△4四歩を皆さんも少し研究したらどうかと思いますよ(笑)*1

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ここから▲2五歩、△4二銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△4三銀が一例。

 インタビューは2015年なので、もちろん今とは状況が違います。2017年に千田翔太六段が「角換わり腰掛け銀4二玉・6二金・8一飛型」で升田幸三賞を受賞し、矢倉から角換わり党にシフトしたという藤井聡太七段が、後手番を持ってだいぶ勝っています。後手でも互角以上にやれるというのが今の角換わりです。
 しかし加藤九段の思想は、飛車先を切らせてもかまわない、その代わりに金銀をすばやく繰り出していく――という近年のコンピュータ将棋が広めた考え方にも通じるものがあります。以前に書いた右四間飛車の記事でも触れたのですが、加藤将棋は今から見ると時代の先を行っていたと思える面もあるわけですね。

araishogi.hatenablog.com

 ところで加藤流の角換わり拒否戦法、2012年の達人戦、対森内俊之九段戦の棋譜を今も見ることができます。

2012年7月20日 準決勝 森内俊之名人 対 加藤一二三九段|第20回富士通杯達人戦

 この戦い、将棋ファンには結構知られているのですが、ある意味加藤九段の棋歴の中でも特異な一局になりました。その意味は……ご存じなかった方は、ぜひ最後までご覧ください。

幸福の一手 いつもよろこびはすぐそばに

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【Amazon.co.jp限定】加藤一二三名局集

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*1:加藤一二三名局集 P19

出典不明の羽生善治語録、書籍から削除される方向へ?

【前回の記事】「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査の件、難航中です

 かれこれ2ヶ月近く追いかけている「三流は人の話を聞かない(以下略)」問題ですが、相変わらず手がかりが掴めません。
 他の棋士の本と混同したんじゃないか、という可能性も考え、では誰なら言いそうかと考えたところ、「米長邦雄さんなら……」と思いつきました。そしていくつかの本を取り寄せて調べてみたのですが、結果は全滅。そんな話は影も形も出てきません。参考までに以下の書籍です。

勝負の極北―なぜ戦いつづけるのか 1997

一流になる人 二流でおわる人 1999

幸せになる教育―子どもも親も先生も校長も 2001

宮本武蔵の次の一手―決して後悔しない人生論 2002

 この問題に関してはライターの松本博文さんも関心を示しており、調査されているようです。しかし私などよりずっと将棋界に詳しく、羽生さんをはじめ多くの棋士の著作にも目を通してきたであろう松本さんでも、まったく見つからないとのこと。

 松本さんは『どんな人にも大切な「売る力」ノート』の版元に出典を尋ねられたのですが、もう当時の担当者は退社しており、詳しい話はわからなかったようです。そしてこんな展開に……。

 これだけ調べても見つからないのですから、やむを得ないのかなと思います。しかしこの「三流は~」発言、他の本にも孫引きされて掲載されてしまっているんですよね。ちょっと調べただけでも、以下の書籍がヒットします。

トップ1%の人だけが実践している 集中力メソッド 2013

なぜ、セブンでバイトをすると3カ月で経営学を語れるのか? 実践ストーリー編―ひと目でわかる図解とケーススタディで鈴木敏文流「売る力」を徹底解明! 2014

必ず出会える!人生を変える言葉2000 [日本語力アップシリーズ] 2014

非情が一流の男をつくる 2015

人生を変えるボディケア! -「自分をもっと好きになりたい」あなたを美しく輝かせる“イメージのちから"- 2017

 それにしてもどなたかが書いていましたが、「言っていないことを証明することの難しさ」をまざまざと感じています。

【続きの記事】「三流は人の話を聞かない(以下略)」の調査のために国会図書館に行ってみました

迷いながら、強くなる (知的生きかた文庫)

迷いながら、強くなる (知的生きかた文庫)

 

女流王位を翻弄! 島本亮五段の独創的すぎる駒運びを見よ

 昨日は順位戦B級1組での菅井竜也七段の反則負けが大きな話題になりましたが、囲碁・将棋チャンネルで放映された銀河戦も、なかなか衝撃の将棋でした。
 対戦カードは渡部愛女流王位vs島本亮五段。LPSA所属の渡部さんは、今まぎれもなく女流棋士のトップグループにいる実力者。一方の島本五段は定跡に囚われない力戦が得意で、最近も「きんとうん戦法」という奇襲戦法の戦術書を出版されています。

戦慄の▲7七金! 奇襲・きんとうん戦法 (マイナビ将棋BOOKS)

戦慄の▲7七金! 奇襲・きんとうん戦法 (マイナビ将棋BOOKS)

 

 さて、両者の戦いですが見たことがない展開となりました。すでに棋譜もアップされていますのでご覧ください。

銀河戦 | 将棋 | 囲碁・将棋チャンネル

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 玉をまったく囲わず、守りの要であるはずの金を前線に繰り出し、飛車先を伸ばしておきながら四間飛車! 驚きとしか言いようがありません。居飛車党の渡部さんはこれまでたくさんの対抗型を指してきたでしょうが、さすがにこんな奔放すぎる駒運びの振り飛車を相手にしたことはなかったでしょう。

 この見たこともないような戦いは島本五段の勝利で、力戦派ここにありを示しました。最後の角捨てが見事な寄せ。しかし渡部さんもあと一歩届かなかったとはいえ、果敢な攻めに見ごたえがありました。
 島本五段は今後、どこまでトーナメントを勝ち進めるか。独創的な将棋をもっと見せてほしいと思います。

大橋貴洸四段が『雨上がりのAさんの話』に出演。哀しき二番星? いやいやそんなことは

 10月16日、朝日放送テレビのバラエティ番組『雨上がりのAさんの話』に大橋貴洸四段が出演しました。

ナイトinナイト火曜日 雨上がりの 『Aさんの話』~事情通に聞きました!~|朝日放送テレビ

 以前に書いた大橋四段の記事がアクセスアップしていたのですが、この番組の影響だったようです。

araishogi.hatenablog.com

 関西の番組ですが、最新回はネットで1週間見逃し配信されているので、関東在住の私も視聴することができました。さて、大橋四段がどのように取り上げられたのかというと……。

世の中には、1位がスゴ過ぎて、光が当たらない哀しき“2番星”がいる。そんな2番星を三度調査員が取材。昨年デビューしたプロ棋士の大橋貴洸さんだ。
ルーキーイヤーの勝率が将棋界で2位と抜群の成績を飾ったものの、まったく注目されていない。それは、彼が史上最年少でプロ棋士になった藤井聡太の同期だったから。そんな大橋さんのアンラッキー列伝を紹介。燦然と輝く一番星の影でもがく大橋さんの哀しきエピソードとは…。

 ……これだけ読むとなんだかネガティブな印象ですね。将棋連盟サイトではこの番組について告知されていなかったのですが、こんなテーマでは告知もしにくかったでしょう。
 しかし実際に番組を見てみると、大橋四段は終始笑顔でトークをしていました。そしてファンなら誰もが聞きたかったファッションについても言及。そうだろうなとは思いつつもはっきりしたことはこれまで聞く機会がありませんでしたが、「目立つため」だと明言されていました。

 全体的にいい番組構成でした。注目されていないというのはあくまで世間一般の話で、多くの将棋ファンはだいぶ以前から大橋四段の実力とファッションに注目しています。だからこそテレビに出てアピールする姿を見られたのは、とてもよかったと私は思います。
 そして大橋四段は、明日から加古川清流戦の決勝戦を戦います。8月にはYAMADAチャレンジ杯でも優勝していますし、若手棋戦2連覇という期待がかかっています。熱戦は間違いなしですね。