Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

昇龍となるか? 大器・都成竜馬五段が竜王ドリームに挑む

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 いよいよ明日6月25日から、第31期竜王戦の決勝トーナメントが開幕します。
 オープニングを飾るのは、ランキング戦6組優勝の都成竜馬五段と5組優勝の藤井聡太七段です。

 世間的には、やはり藤井七段に注目が集まるのでしょう。先月に史上最年少七段となった藤井さんですが、仮にこの決勝トーナメントを勝ち進み、羽生善治竜王に挑戦、そして竜王位奪取となれば、八段昇段が実現します。
 それに何と言っても、竜王戦は4,320万円という最高の優勝賞金が用意されています。そういう方面からの報道が増えることは、想像に難くありません。

 藤井七段の前に立ちはだかるのは誰か――というのは、将棋にあまり詳しくない人も気になるでしょう。当ブログとしても、この本戦に登場する棋士は平等に取り上げていきたいと思います。

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 都成五段は1990年1月17日生まれの28歳。2000年に奨励会入会で、四段プロデビューは2016年、26歳の年齢制限で奨励会を退会となる直前のことでした。これだけ見ると、苦労に苦労を重ねた遅咲きの新人という印象を受けます。

 しかしそれ以前から、彼は将来を嘱望されていました。2013年、まだプロではない奨励会員の身でありながら新人王戦で優勝したのです。もちろん史上初の快挙でした。
 また、卓越した序盤研究家としての面もあります。「都成流」「都成新手」と呼ばれる指し方が、プロの実戦で幾度も登場したほどです。プロの実力は確実にあるというのは、同業者ばかりではなく熱心なファンの間でもすでに知られていたのです。

 ようやく棋士デビューした都成さんは、それまでの苦労を吹き飛ばすように、周囲の期待に応える活躍をします。現在のところ通算勝率は7割を超えており、昨年度は藤井七段と並んで順位戦C級1組への昇級を果たしています。そして今回、竜王戦決勝トーナメントに名乗りを上げたわけです。また初の戦術書も出版し、好評を博しています。

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 さて、都成五段の師匠は十七世名人の有資格者である谷川浩司九段です。
 都成五段は谷川九段の唯一の弟子です。小学生名人戦で優勝したこと、将棋と縁のある名前(竜馬)であったこと、そして誕生日が1月17日――谷川九段が被災した阪神大震災と同じ日であったことが、それまで弟子を取ったことのなかった谷川九段の心を動かしたそうです。
※谷川九段と阪神大震災のエピソードについては、将棋ペンクラブログの記事が詳しいです。胸打たれずにはいられません。

 谷川九段としても、今回大舞台に挑もうとする愛弟子の姿には、格別の思いがあることでしょう。
 なお谷川九段と都成五段の師弟関係については、つい先日刊行された『師弟 棋士たち魂の伝承』で大きく扱われています。大好評なので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

師弟 棋士たち魂の伝承

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 都成五段と藤井七段の過去の対戦成績は、藤井七段の3戦3勝です。将棋イベントの席上対局、つまり非公式戦では都成五段が1勝を返しているのですが、公式戦で勝たなければ――との思いは誰よりも強いはずです。
 はたして都成五段のリベンジなるか、それとも藤井七段が今年度無敗を継続するか。大注目の一戦です。