曖昧だった順位戦の昇降級規定、ようやく明文化される
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名人戦七番勝負が絶賛進行中ですが、今年度の順位戦の組み合わせ表が発表されました。
さて、前期のA級順位戦で、前代未聞の6者プレーオフに突入したことは記憶に新しいところです。これは一種の事件でした。
そしてこの事件が浮き彫りにしたことがありました。それは順位戦の昇降級について、明文化されていない事項がいくつかあったということです。
- 指し分けは降級しない
- 全勝すれば順位にかかわらず昇級できる
特に将棋ファンが関心があったのはこの2点です。将棋ライターの松本博文さんがベテラン観戦記者の東公平さんに尋ねたところ、こんな返事があったそうです。
「指し分けは降級せず」の規定について。長年に渡って名人戦やA級順位戦の観戦記を担当されてきた、東公平さんにうかがいました。
— mtmt (@mtmtlife) 2018年2月1日
「ずっとそういう規定があったのは、もちろん事実です。間違いない。え? 明文化されていない? それは知らなかった。まあ、そういうところだからねえ・・・」
かつて将棋連盟に勤めていた方も、明文化はされていないけどそういうことになっている、という証言をされています。
「順位戦全勝は全員上がる」「指し分けは降級しない」
— 解答欄魔 (@k1sumi) 2018年2月1日
当方が手合課にいた頃は、上記は明文化されていないがそれは昔からの決まり事だと理事に言われました。それがいわゆる連盟流かもしれませんが。
本来、A級は10名の総当たりのため指し分けはありえないのですが、前期は冤罪事件から復帰した三浦弘行九段のA級地位保全措置により、11名で行われていました。そして降級枠3名のうち、指し分けで終わる棋士が出る可能性がありました。実際はそうならなかったのですが、これを機に規定の不備を指摘する声が内外から続出したわけです。
順位戦の指し分け規定の件も含め、全体的に恣意的な判断を許容しない組織作りが求められていると思います。
— 西尾明 (@nishio1979) 2018年2月9日
前置きが少し長くなりましたが、上記の点を含む順位戦の規定について、このたび(26日から?)大幅に追記されたようです。
まず「順位・昇級・降級・降級点」の部分。
- 指し分け以上の成績でも降級枠(降級点枠)に該当する場合は、降級となります(降級点がつきます)。
次にB級2組、C級1組、C級2組について、この規定が追記されました。
- 【B級2組】成績上位者2名の棋士はB級1組に昇級します。ただし、リーグ戦成績の全勝者が3名以上いる場合は、全勝者全員が昇級します。
- 【C級1組】成績上位者2名の棋士はB級2組に昇級します。ただし、リーグ戦成績の全勝者が3名以上いる場合は、全勝者全員が昇級します。
- 【C級2組】成績上位者3名の棋士はC級1組に昇級します。ただし、リーグ戦成績の全勝者が4名以上いる場合は、全勝者全員が昇級します。
このように明文化されたのは、やはりよいことだと思います。
たとえば藤井聡太六段は、C級1組に新しく入ったため、順位がかなり下です。そのため今期も全勝で終えたとして、上の順位に全勝者が2名以上いたら、昇級できないということもありえたわけです。これは将棋ファンのみならず、世間からもおかしいという声が殺到するでしょう。
少なくとも昇降級に関しては、もう規定の不備はないと見ていいのかなと思いますが、おそらく他にも明文化すべき事項はあるのでしょう。今後も将棋ファンのために、そして実際に戦う棋士自身のために、柔軟に規定の見直しをしていただきたいと思います。