名人撃破! 絶好調、あるいは一皮剥けた橋本崇載八段
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昨日のA級順位戦「将棋界の一番長い日」、すさまじいの一言でした。前代未聞の6人によるプレーオフ、冤罪事件を経て理不尽な最下位に置かれた三浦弘行九段の残留、その三浦九段に敗れた渡辺明棋王の陥落。今後数十年にわたって語り継がれるであろう、伝説の日になりました。
この特大ニュースの影響ですっかり影が薄くなってしまったのですが、昨日はもうひとつ大きなカードがありました。竜王戦2組ランキング戦の、橋本崇載八段対佐藤天彦名人です。
第31期竜王戦2組ランキング戦 佐藤天彦名人VS橋本崇載八段
— 日本将棋連盟【公式】 (@shogi_jsa) 2018年3月3日
橋本八段が佐藤名人を破り、勝ち進みました。https://t.co/zKKlVVNRD8
この対局は橋本八段の勝利でした。戦型は横歩取り。横歩取りといえば佐藤名人の十八番で、名人奪取の原動力となったことでも知られています。
一方の橋本八段は居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンダー。しかし現在振り飛車の採用は減っており、代わりに積極的に横歩取りを指すようになっています。ここ最近モバイル中継されたものを見ても、その割合はかなりのものです。
そして昨日も現役名人のエース戦法を真っ向から迎え撃ち、見事に勝利しました。これで橋本八段の今年度成績は13勝14敗。負け越しているのですが、直近10局だと8勝2敗となっており、その充実ぶりがわかります。
かつての橋本八段は、NHK杯に金髪パンチパーマで出たとか、カメラ目線をしたとか、佐藤伸哉七段のモノマネをしたとか、何かと話題先行の面がありました。しかしそれが将棋ファンに知られるようになった一因であり、実際のところ私もそうして彼のファンになったひとりです。
橋本八段が将棋バーをオープンしたと聞くと、それまでバーなどというものに行ったこともなかった私が、一念発起して足を運んでみました。ぜひとも実際に会ってみたかったのです。
間近で接した彼は、非常に真摯で礼儀正しい青年でした。テレビで見せるのはあくまでパフォーマンスであり、これが本来の彼の姿なのだなと感銘を受けたものです。それからも定期的に足を運んで、誕生日を周りのお客さんと一緒になって祝ったこともありました(確かそのとき「後手振り飛車もう辛い」と言っていました)。
しかし2016年、冒頭でも触れた三浦九段の冤罪事件が起こります。
橋本八段はこの件に直接の関わりはなかったのですが、Twitterでの勇み足な発言がありました。直後から疑問の声が上がりましたが、いよいよ三浦九段のシロが明らかになると、いっそう批判の声が集中しました。彼にとっては拭いがたい痛恨のミスであり、失望した将棋ファンも少なくなかったことでしょう。※橋本八段はその後、三浦九段に謝罪をしています。
橋本崇載八段が三浦弘行九段に謝罪「一兆%無実です。疑ってごめんなさい!」 | 将棋ワンストップ・ニュース
この事件を経て、彼は変わったように感じます。
Twitterアカウントを閉鎖し、あれだけ真摯に経営していた将棋バーも閉店し、新たな気持ちで将棋一本のみに打ち込んでいます。
4局終了時点では1勝3敗と苦しい星だった橋本八段。
— 名人戦棋譜速報 (@meijinsen) 2018年2月16日
5連勝で昇級争い単独2番手まで浮上しました。
最終局に勝てば第71期以来のA級復帰です。https://t.co/4Ewc1PD4uw #shogi #meijinsen pic.twitter.com/2k5gX5QiG7
最近はこのように、和服をよく着用しています。常に自分は見られているのだと、まるでタイトル戦のように気を引き締めている。
現在の好成績は、この姿勢と無関係ではないと思います。橋本八段は、棋風の変化とともに一皮剥けました。
そして今、A級への返り咲きが見えてきました。
B級1組の最終戦は3月9日(金)。橋本八段は現在単独2位で、自身が勝てば昇級。負けても3位の阿久津主税八段が敗れれば昇級が決まります。
かつては即陥落の憂き目に遭った最高峰の舞台に、再び乗り込もうとしています。昨夜死闘を繰り広げたA級棋士たちと比べても、何ら見劣りすることはありません。
最後に今日は、橋本八段の誕生日です。おめでとうございます。