Arai Koh's Shogi Life

将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

絶対王者に急戦で挑む! 八代弥六段-羽生善治竜王戦を振り返る

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 この週末にいよいよ開幕した、第11回朝日杯将棋オープン戦の本戦。今日は佐藤名人に藤井四段が勝利したことが話題となりましたが、それと同等以上に盛り上がったのが、昨日の八代弥六段vs羽生善治竜王戦です。
 羽生竜王はこれまでに5回の優勝を誇り、実績では圧倒的に上回りますが、八代六段こそは前年度の朝日杯覇者。若手の中でも随一の実力者と言えるでしょう。

 さて、後手となった羽生竜王がどんな戦型を選ぶかが注目されましたが、なんと角道を止めてのノーマル四間飛車! 羽生竜王は基本的に居飛車党ですが、何でも指せるオールラウンダー。その前の高見五段戦でも四間飛車(藤井システム)を採用していました。今度もやってくれるかも……と期待した振り飛車党は多かったですが、そのとおりになりました。
 そして、さらに驚きだったのが八代六段の選んだ戦型でした。

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 鷺宮定跡! まさかの急戦でした。
 先日、鷺宮定跡で阿久津八段に勝利した青野九段の対局を取り上げましたが、八代六段は青野九段門下です。プロの将棋界において、師匠は弟子を直接教えることは少ないと言われますが、青野九段は珍しく直々に教えるタイプだそうです。

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 八代六段もおそらく、鷺宮定跡について手ほどきを受けたことがあるのでしょう。何より相手は最強の羽生竜王、生半可な準備や思いつきでこの戦型を選ぶわけはありません。今やほとんど採用例がありませんが、普段からひそかに研究していたのだと思います。とにかく対振り飛車急戦派としては、とてもワクワクする展開でした。

 対局はまさに大熱戦でした。終始八代六段が優勢に進めており、解説の木村九段が「どう見ても、八代六段が勝ちという局面が複数回ありました」と語るほどでした。しかし羽生竜王の頑強な粘りの前に、形勢は二転三転。最後には絶対王者の前に膝を屈する形になりました。
 惜しくも敗れたとはいえ、近年ほとんど見られない対振り飛車急戦の、間違いなく名局でした。急戦はいまだ死なず。その思いを新たにさせてくれた八代六段の健闘を、心から称えたいと思います。