Arai Koh's Shogi Life

駆け出し将棋ライター・アライコウのブログです。将棋について書いていきます。

加藤一二三九段も愛用した右四間飛車が今熱い!

スポンサードリンク

 右四間飛車。その名のとおり、右から見て四筋目に飛車を据えて戦う戦法です。飛車を振るのですが振り飛車ではなく居飛車の戦法です。

 将棋の攻めは飛車角銀桂と言いますが、それを一点に集中させるこの戦法はまさに破壊力抜群。棒銀と同じく狙いがわかりやすく、あの加藤一二三九段も現役時代に愛用したことで知られています。この戦法がその真価を発揮するのは、相手が角道を止めたとき。

f:id:araicreate:20171114234249p:plain

 これは2013年12月27日、加藤九段が佐藤慎一四段と戦ったときの途中図です。四段目に突き出ている6六の歩が、右四間飛車にとっては格好の目標になるのですね。この速攻の破壊力をよく知るがゆえに、加藤九段自身は早くに▲6六歩と指すことはしていませんでした。「矢倉5手目問題」という有名な議論がありますが、

「▲6六歩が主流だが、私は▲6六歩と突いたことがない」*1

「私の矢倉は▲7七銀から始まる。▲6六歩と突く棋士が多いが私は、この手を指さない。反対に相手から▲6六歩と突かれたときは急戦に出ている」*2

 と書いているくらいです。近年流行している左美濃急戦も、突き出た歩を目標にすばやく攻めるという点で、右四間飛車とその思想は共通しています。

 この右四間飛車、攻めが単調になりがちということでプロ間ではあまり評価されていませんでした。好んで指すのは加藤九段の他に中川大輔八段、あとひとりふたりいるかという程度。ところがここ最近、徐々に公式戦でも見られるようになったのです。

 まず9月3日に行われたNHK杯将棋トーナメントの、森内俊之九段vs藤井聡太四段の一戦。生放送で注目を浴びたこの戦いで、藤井四段が選んだのが右四間飛車でした。

 

NHK囲碁と将棋 -NHK杯テレビ将棋トーナメント 棋譜再生-

 

 まさに完勝でした。局後の感想で藤井四段は「早指しなので積極的に攻めていこうと。考えてきた形ではありました」と語っています。

 そして昨年の冤罪事件から復帰し、今年度は好調を維持している三浦弘行九段。10月19日、棋王戦挑戦者決定トーナメントで豊島将之八段と対局しました。豊島八段は今年度の最高勝率棋士となるかもしれないほど勝ちまくっていますが、先手の三浦九段が右四間飛車で果敢に攻め、見事に討ち果たしています。もともと三浦九段は右四間飛車本を出しているくらいですから(ただし対振り飛車用)、入念な研究があったのでしょう。

三浦流右四間の極意―四間飛車をやっつけろ

三浦流右四間の極意―四間飛車をやっつけろ

 

 最後に11月13日、王将戦挑戦者決定リーグに登場した糸谷哲郎八段です。このときの相手も豊島八段で、後手糸谷八段の右四間飛車と戦い、敗れました。短期間に立て続けにこの戦法にしてやられた豊島八段の心中はいかばかりか。

 攻めが単調になりがちと評価されていた右四間飛車ですが、ここに来て新たな攻め筋が見つかっているようです。

この土日で電王トーナメントが行われています。棋士との対戦はひとまず終わった訳ですが、雁木や急戦矢倉のようにソフトの影響を受けている戦型は多いです。プロ将棋の指し口で言えば玉を固めることへの評価が以前ほどではなくなり、隙あれば攻める、という流れになってきています。玉を固めるのは終盤での逆転勝ちを狙っているわけですが、現代は入念な序盤研究によって前半からリードしての先行逃げ切りを狙うのが主流ですからね。

将棋、マンガ、競馬。 - 渡辺明ブログ

 渡辺明竜王が先日このようにブログに書いていました。右四間飛車が少しずつ復活しているのも、おそらくこういう理由からなのだと思います。

 そして右四間飛車の有用性を以前から主張していた加藤九段は、やはりすごいと再認識させられます。

*1:加藤一二三名局集 P153

*2:同 P348